風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

明日のパン

 先週の日曜日、以前来てくださったことのあるお年を召した女性から、パンを選びながら、 



 私たち年寄りには ちょっとこのパン固いんだけれど
 何とも言えない味なのよね〜



と言っていただいた。(ありがとうございます!)
 来てくれた時間にはまだ、ハード系のパンしか焼き上がっていなくて、どれにしようか迷っていらしたけれど、昨日のパン(売れ残って割引販売中)の中からシナモンロールを二つと、焼きあがったばかりの、いちじくとクリームチーズ入りのプチカンパーニュ、それから、その日ちょっと特別に焼いたライ麦パンのフルーツバスケットを、ご主人の分と二つずつかごに取り、「では、これで」とカウンターに置く。
 私が袋に詰めている間に、何気なくまた店の中を見渡して、机の上に置いてあった焼き立てのカレーパンを見つけると、



 あら カレーパンがあるの…
 じゃあ お昼は 
 カレーパンにしようかしら



とおっしゃったので、



(すでにとってあるパンのどれかと)
 変えましょうか?



と聞いたら、



 それはそれでいいわ
 明日食べるから



と、カレーパンをやはり2つ、追加してくださった。



 実は、カレーパンは、オープンした頃には作っていなかった。衣をつけて揚げるタイプのカレーパンは、破裂しないように作るのがむずかしく、私自身、油を多く使う揚げもののパンを作る気持ちもなかったのだ。
 それが、ある時、前日のカレーを使って焼きカレーパンを作ったところ、思いがけず



 カレーパン、おいしかったです
 今日は カレーパン
 ないんですか?



と何人かの方に言っていただき(ありがとうございます!)、ここ最近はほぼ毎週作るようにしている。
 ちなみに、3週続けて作ったあとに、自分が飽きてチリビーンズパンにしたところ、



 今日はカレーパン、ないんですか?



と、やっぱり聞かれた(笑)



 考えてみれば、明日食べるパンを買うということは、明日も自分が生きているという前提が無意識の中にあるからだ。でも、本当に明日、自分が生きているかどうかは、誰にもわからない。明け方に地震が起きて…ということが、ありえないわけではない。それでも、明日も自分は生きるのだ、と思えるからこそ、「明日のパン」を買っていく。

 

 昨夜のカレー 明日のパン・・・



 私は本はあまり読まないのだが、去年の8月に珍しく、題名に惹かれて、木皿泉さんの『昨夜のカレー 明日のパン』という小説を読んだ。その中で、「明日のパンを買いに行く」という表現が、なぜかとても印象に残った。
 そして、思わず今日は、工房建設時にメンバーのねこさんが作ってくれたパンメニューを書いた看板に、この一枚を付け加えた。





「明日のパン」あります。