風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

明日のパン種

 1996年に仕込んだ梅酒を、去年、箱の中から取り出して、つい最近飲み終えた。



 とろりとした琥珀色になったそれは、ふくよかな味わいをしていて、とてもおいしかった。
 パン工房の建築メンバーや妹にもふるまったのだが、みんなに

 おいしい〜!
 よく 今まで 残っていたね
(自分ならとっくに飲んでしまっていたよ
 残っていることが 奇跡!)

と言われた。
 最後の1杯を飲みながら、

 あの頃の自分に ありがとう!

と言いたくなった(笑)

 時々、昔の自分に助けられることがある。
 それは、積み重ねた経験や体験だったり、乗り越えた紆余曲折だったり、あるいは現実的な貯金だったり、梅干しや味噌や果実酒といった、時間を経て味わいが増したおいしいものだったり。現時点では、いつの間にか(それなりに)うまくできるようになっていた料理やパン作りの技、ということもある。
 自家製酵母のパンを焼くには、パン生地を前日に仕込まなければならない。それ以前に、パンの元種を作るためには、1〜2週間の時間が必要だ。
 工房で焼いているのは、今日売るパンなのだけれど、お客さまが買っていくのは明日食べるパン、という場合もある。
 できることなら、今日食べて終るパンじゃなくて、明日も生きるためのパンでありたい。どこかでそんな気持を持ちながら、夜中にパンをこねていたりする(ほんとか?
 実は先週の金曜日は、寝不足と工房内の高温がたたって、頭痛がなかなか治らなかった。夜になっても治まらず、かなりつらかったので、明日は臨時休業しようかな。。。としばし悩んだのだが、その日の終わりに「今日は おしまい」という看板とともに「明日 パンを焼きます」という看板も出してしまったし、それでなくても数少ない営業日。中には、明日このパン屋さんに行ってみようと思っているお客さまもいるかもしれない…と思うと、やはり休むわけにはいかった。
 結局、金曜日の夜は夕食を作る気力もないままとりあえず寝て、夜中に起き出し、仕込み量を減らして真夜中から明け方にかけて生地をこね、土曜日もパンを焼いた。猛暑のせいもあって、お客さまの数は少なかったけれど、その日も炎天下の中来てくださったお客さまがいたので、やっぱり頑張ってよかった〜と、いつの間にか元気を取り戻していた。

 明日のパン種をこねる。
 ということは、つまり、明日も自分は生きていくよ、という意思表示でもあるんだよね。