風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

別世界

 先週いらしたお客さまから、

 時々 ブログをまとめて読んでいるんですけど
 あのブログを読んでいると
 なんだか 別世界に住んでいるような気がするんですよね・・・

と言われた(笑)
 と思ったら、その翌日、よくパンを買いに来てくれて顔なじみになった女子高生から、

 この部屋(パンの販売スペース)
 「(借りぐらしの)アリエッティ」みたい・・・
 アリエッティとか ジブリの映画に出て来るみたいな・・・
 ああいうの 好きなんですよね〜

と言われた。

 私のパン屋以外での実生活は、今週の収入が来週の生活費に直結していて、リアルにシビアな現実があるのだが(笑)、その部分は横に置いてみてみると、確かに別世界にいるような気がしなくもない。
 まず、テレビがないので、社会との距離ができていて、ややもすると、日本の今の首相は誰?ということがわからなくなっている可能性がある。
 住んでいる家は実家なのだが、築55年の日本家屋で、家を取り囲んでいる庭はそれほど広いわけではないものの、母が自然のままにしているのが好きだったので、一見野原のように見えなくもない環境になっている。特に今はまだ、新緑の淡い緑が光に透けているので、どこかしら不思議な世界に入り込んだ気持ちになるといえばそう言えなくもないかもしれない(びみょー)
 その家に、私は猫3匹とともに暮らしている。
 この場所自体、住宅地の中なので、隣近所に家が建っているものの、庭に回り込んでしまうと意外なほど静かで、お隣さんの庭もかなり自然に近い状態になっていることもあり、鳥の声がよく聞こえる。
 パンの仕込をするために夜中に外に出ると、多少なりとも月や星が見えて、庭に続く道の脇には、スギゴケの類がふかふかに生えている。
 パンを作るための酵母を最初に起こした、私にとっては守り神でもあるブルーベリーを何本か、庭の奥に植えてあり、庭の手前のほうには香りのいいハーブを十数種類、それから、西洋では「魔女の木」とも呼ばれているらしい、エルダーも植えている。
 ローズヒップがとれるドッグローズもいい具合に根が着いて、垣根になりつつある。
 ラベンダーも、株が大きくなってきた。
 その一方で、もともとこの庭に生えているアマナ(他県では、絶滅危惧種に指定されているところもあるらしい)やフキやノビル、ミョウガヤマノイモも、絶えることなく毎年芽を出している。

 パン屋になろうと思った時にイメージしたのは、確かにこんな風に暮らすことだった。
 ジブリの映画に出てくるような庭先で、自分が食べるパンを焼く時に少し余分に焼いて、そのパンを買っていただいた収入で生活できるようになりたいと思っていた。
 自分の理想として描いた世界は、実世界から見ると、かなり現実味が薄れているかもしれない。でも、案外多くの人が、こんなふうに生きたいと思っているのではないだろうか?
 そんな生き方は、実現できそうにない「夢」ではない。ちょっとした気持ちの転換の仕方で、自分で形作っていけるものなのだ、ということをお客さまに感じてもらえたら・・・。
 実はそのことも、私がパン屋になってしたかったことの一つだったりするのである。



 別世界への入口は、探してみれば、自分のすぐそばに開いているものなのかもしれませんよ・・・