風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

酵母記念日

 今日はわたしの酵母記念日!



 その時私は、奥会津という中山間地に住んでいた。自分で何かをしたいと思いながら役場の臨時職員をしつつ、畑を借りてブルーベリーを200本植えたりしていた。(植えたはいいけれど、なかなか手入れが行き届かなかったのだが・・・)
 ブルーベリーを植えたのは、ジャムを作りたかったからだ。自分の作ったジャムは、どこのジャムよりもおいしい!とその頃は思っていたので(今はただの思い込みだったと認識)、ジャム屋になりたいと思ってのことだった。が、ジャムだけで暮らせるようになるとは到底思いえない。ブルーベリーを植えた一方で、他に何かプラスできるものはないだろうか?と心の片隅でいつも考えていた。
 そんな折、町内にパン屋もなければ近くに自分が食べたい!と思うようなパンを売っているパン屋がないことにどうしても耐えられなくなり(ちょっと大げさ)、こうなったら自分でパンを作るしかない!作ってみよう!と勢いづいた。
 どうせ作るなら天然酵母、と調べているうちに、市販の天然酵母は自分がやりたいと思えることではないということに気がつき、それなら一度やってみたいと思っていたレーズンで酵母を起こしてパンを作る、という方法で試してみようと思った。さらに調べると、生のぶどうでも酵母が起こせるらしい。ちょうどブルーベリー畑の隅に1本ぶどうの木を植えていて、それに実がついているのを見てはいたが、残念ながらまだ実は熟していない。でも、今やりたい!代わりになりそうなものはないか?と考えていて、思い当たるものを見つけた。
 それは、ブルーベリー。ちょうど今、熟しているではないですか!実にはブルーム(実の表面に白っぽい粉のように見えるもの=じつはまさしく、それが酵母の集まりらしい)がたくさんついているし、なんだか発酵しそう・・・。



 ということで、2007年7月17日に、畑に植えていたブルーベリーで酵母を起こしてみようと試みたのが、ことの始まり。
 瓶の中に潰したブルーベリーと水を入れ、ぷくぷくと発酵してくるのを待つ。気温は高かったにもかかわらず、発酵するまでには結構時間がかかった。それから発酵液と小麦粉を混ぜてパンの元種を起こし、作り方もよくわからないままパン生地をこね、ちゃんとふくらんでいるのかどうかもよくわからないままそれを焼いてみたら・・・



 できた〜!



最初はうまく膨らまなかったり固かったり、どうせ失敗するだろうと期待もしなかったのとは裏腹に、パンらしきものができたのだ。
 そして、この感動を誰かに伝えたい!という衝動から、その2週間後には、パン屋になる!と決意していた。



 あれから丸7年。
 様々な紆余曲折があった。よくぞ諦めずに酵母とつきあい、パンを作り続けてきたものだと我ながら思う。
 継続は力なり。
 おかげで、時間をかけて自分の中に積み上げてきたものは、そう簡単には壊れないだろうと思えることが、今の心の支えになっている。
 一昨年までは夏になると酵母がダウンしてパンが作れなくなっていたけれど、去年初めて夏の間もパンを作ることが出来た。今年も今のところ、梅酵母で起こしたパンの元種は、元気に生き続けている。
 




冷蔵庫にお守り代りに入れている梅酵母も、まだまだ強力に発酵している。



 とはいえ、自家製酵母のパン屋は、いつでも綱渡り・・・(笑)



 パン工房が今後どう展開していくかは神のみぞ知るだけれど、自分のこれからのイメージは、天空の城ラピュタに出てくる、巨神兵。鳥やリスと一緒に、先に逝った者たちへ花を捧げながら静かに生きていく・・・。
 猫3匹の家族と、無数の酵母というビジネスパートナーとともに暮らすことは、結構それに近いような気がする。