庭に毎年葉が出てくることだけは覚えているチューリップは、赤い花だった!
母屋の茶の間の目の前の庭先に、毎年ぽつんと1つだけでてくるこのチューリップが何色の花だったか、なぜかいつも、思い出せない。
どうして自分の中からこのチューリップの花の色の記憶が消えてしまうのか?そのことが謎である。
カントウタンポポや、
ハルノノゲシや、
クサノオウや、
春は黄色い花が目につくけれど、それよりも、カキドオシやムラサキケマンやホトケノザやタチツボスミレのような、薄紫の花に惹かれる。
関東に住んでいた頃は、春が苦手だった。
急に生温かくなるこの気候に、どこか気持ちが不安定になりそうな気配を感じて、春という季節を全身で喜べないでいた。
それが、奥会津という豪雪地帯に住んだことで、春が来ることの本当の嬉しさを知ることになった。雪国の春は、「冬が明けた」喜びに満ちている。毎日のように降り続く雪が、少しずつ間遠になって、晴れの日が増えていき、雪解け水の音が聞こえて、木々が一斉に芽を吹く。新緑の伸び方も、関東地方の2倍の速さがあるのでは?というくらいに、一気に周りの景色が緑色になった。
そして、再び関東地方の実家に戻った今、春になるとやっぱりどこかで、心が不安定になりそうな気配を感じる。
そんな繊細な心の動きを落ち着かせてくれるのは、元気いっぱいの黄色い花よりも、薄紫色の小さな花。
急いだりあわてたりしないで、春の芽吹きを楽しみながら、ゆっくりね。