自家製酵母でパンを作っているうちに酵母に教えてもらったことが、もう一つある。
それは、
正解は一つではない。
ということ。
酵母を起こしてパンを作ったことがある、という人と話してみると、最初に本やネットで調べたりパン教室などで教えてもらったやり方そのままにパンを作り始めても、徐々に自分がやりやすい、あるいはこうした方がうまくいく、というやり方に変えていっている人が多いようだ。
純粋培養されて市販されているイーストや天然酵母でさえ、捏ね上げ温度を何℃にして、その後何℃で何時間発酵させると一次発酵が完了する、という数字をそのまま守ったとしても、季節の温度や湿度などの環境によって微妙に変わるもの。
実際、私自身、捏ね上げ温度や一次発酵の時の温度を温度計で測ったりしていない。自分の体で感じた水や生地の温度や気温、あるいは外気の温度変化を予想して、勘で決めている。
ま、単にめんどくさがりなのと、数字に弱い、ということもあってそうしているのだが、特に1℃の温度でも変わりやすい発酵が関わっているパン作りについては、自分の感性を研ぎ澄ませることができたなら、勘の方がより正解に近いものを導き出せるような気がしている。
というよりその前に、「正解」っていったい何なんだ?とも考える。
製パンを学校で習ったこともなく、パン屋で修行したこともない私が作るパンは、いったい「正解」なのか?
それは、「正統ではない」というだけのことなのではないだろうか。
極端な言い方をすれば、自分が食べたいと思うようなパンが本格的なフランスパンやドイツパンではなかったとするなら、自分にとってはその正統的な作り方は正解ではない、ということになる。
正解は一つではない。
そのことは、つまり、自分を信じて自分の道を行けばいい・・・
酵母に教えてもらったもう一つのことは、そういうことなのかもしれない。