パン屋開店から２年目となり、ほぼ毎週のように来てくださるお客さまが何人かいるのだが（ありがとうございます！）、その中でも話をする機会が増え、「仲良くなった」という感じのお客さまが何人かいらっしゃる。
本日夕方近くに来てくださったお客さまも、その一人。パンを買いに来てくれた時のたわいのないおしゃべりが、秘かな楽しみになっている（たぶん、お互いに）。
で、今日は、店内の足踏みミシン（母が使っていたものをインテリアにしている）の上に置いたガラスケースの中に飾っていた、土鈴が目についたらしく、ガラスケースを開けてそれを取り出すと、
これ 何ですか？
と尋ねられた。
それ 土鈴です
「どれい」？
土でできた 鈴なんです
へぇ〜
音 出るんですか？
出ると思いますよ
と答えると、彼女は確かめるように振ってみた。
すると、からからからと、乾いたような小さな音がした。
控えめな音ですね（笑）
と私が言うと、
確かに 控えめですね
ガランガランガランッ！
という音より いいですよね
本当ですね
土鈴に興味を持ったようだったので、以前私が俳画の先生から教えてもらったことを思い出して、話を続けた。
土鈴って
お寺とか 神社とか 鬼子母神とかで売ってたりするんですけど
・・・でも 最近はあまり見ないかな？
母が 以前 集めていたことがあって・・・
鈴って、音が「鳴る」でしょ？
だから 「よくなる」・・・
病気が回復する とか
運勢がよくなる とか
いい方向に向かう という意味を込めた
縁起物らしいですよ
へぇ〜！
いいですね〜
最近 そういう話をしてくれる人
少なくなりましたよね
そうですねー
人に自慢して話すようなことじゃなくて・・・
そうそう！
「粋な」こと？
こういうことって
知っていると心が豊かになりますよね
ねぇねぇ 知ってる？って 人に自慢するんじゃなくて・・・
うん 心が豊かになるって
本当に そうですね
自慢することじゃないんですよね
たとえば 旅先で 土鈴を見つけた時に
そういえば 「よくなる」縁起物っていう話
教えてもらったな〜って思い出して
買って帰ろうかな って買って
からんからんって 鳴らしてみて
なんか いいことあるかも！
って 何となく幸せな気分になる みたいな
そういうの いいですね〜
お客さまは、これからある方の実家にお線香を上げに行くためのおみやげと、自分のパンを少しだけ買われにきたのだった。そして、帰りがけ、
明日も またパンを買いに来ます
明日 買っておかないと
来週のパンが ないので
と、笑った。
はい
お待ちしています
お客さまがドアを開けると、涼しい風が吹き込んだ。
お気をつけて〜
はーい
そうして今夜も私は、誰かのために、明日のパン種をこねるのである。
