風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

神無月

  うわぁ〜っ!

 朝、油断してぼんやり歩いていると、頭上でバリバリバリっと何かを蹴破るような感触がして、クモの巣に引っかかる。9月から10月の今頃は、クモがあちこちによく巣を張り、人間もその網にかかるのだ。
 さすがに、ニンゲンをとらえて喰らおうというつもりはないだろうが、網にはまったこちらは、何か謎の結界を破ったような気持ちにもなる。


 



 20代半ばの頃、その頃勤めていた会社の人から、雑談のなりゆきで、

 世の中でいちばん怖いもの 何?

という質問をされた。
 まだかろうじてうら若きギリギリの年齢の私に向けられたその質問の答えは、クモとかヘビとかゴキブリとか、あるいは幽霊とか、気を利かせてまんじゅうとか・・・そんなあたりを期待されていたのは分かっていたのだが、自分にとっていちばん怖いと思われるものはこれしかない、と、

 人間・・・

と答えたところ、一瞬しら〜っとした空気が流れた。。。
 今は、ごく自然にお客さまとペラペラしゃべっているけれど、子供の頃の私は人と話すことがほとんどできなかった。自分から話しかけるなんていうことは愚か、質問されても首を縦か横に振って答えることしかできないような子供だった。
 学校でようやく先生の質問に答えたりすると、決まっていつも「そんな蚊のなくような声じゃなくてちゃんと声を出して!」みたいなことを言われたので、よけいにしゃべれなくなり、なので学校も先生も大嫌いだった。
 そして、みんなが普通にできることをできない自分も、嫌いだった。
 だから、世の中でいちばん怖いもの、いちばん嫌いなものは人間だった。

 その後、ひょんなきっかけから思い立ってバイクの免許を取ってツーリングをするようになってから、バイクに乗っている時間がいちばん自分らしい!と思えるようになり、それと同時に自己嫌悪も薄らいで、ずいぶんと気持ちが楽に生きられるようにはなったけれど、「世の中でいちばん怖いものは?」の答えは、ある意味やっぱり変わらないかも・・・




 光の秋。
 逆光で見る、花の色が美しい。
 摘心の後に出てきた枝に、再び花が咲いたメドーセージ
 矢羽模様の江戸紫・・・というには、青味(紺系)をもう少し足したいところ。
 昔も今も、人のことよりも、ついこういうものの方へ目が行ってしまう。