風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

酵母記念日12周年

 人生には、自分の誕生日や家族の誕生日をはじめとしたいろいろな記念日が人それぞれにあると思うのだが、年をとり、私には両親の命日という日もそれに加わった。「記念日」というのとはちょっと違うかもれないが、記憶に残る日、という意味でのそれである。
 ちなみに7月には母の命日があり、なんと今年で丸10年となってしまった。両親がこの世からいなくなってから私はもう10年も生きているのか・・・と思い返すと、結構な怒涛の日々の10年をよくもまあ一人で乗り越えてきたと思わずにはいられない。

 それはともかく、自分にとっての記念日には、パン屋の開店日もあるわけだが、それ以上に記憶に残る日がある。
 それは、酵母記念日。2007年の7月17日、自家製酵母のパンを作ってみようとブルーベリーで酵母を起こした日である。
 その酵母液を元にパンの元種を作って初めてパンを焼いてみたところ、最初はうまくいかないだろうという予想に反し、思いがけずパンらしいものが出来上がった。その時の感動が原動力となり、酵母を起こした日から1か月も経たないうちに「パン屋になる!」と決意してしまったのだった。
 酵母を起こしてパンを焼いた時に暮らしていた会津(福島県)から、実家に戻ってパン屋を開店するまでと、開店してからの6年5か月。絶対にパン屋になる!と思っていたけれど、くじけそうになったこともありましたよ。それでもここまでこられたのは、自然と共存できる庭のある実家で暮らしながら、自分の近くで生きている酵母を育てて自分用のパンを焼き、その時に少し余分に焼いて、そのパンを売って生活する、という生き方をしたいと強く願っていたから。(ぶっちゃけ、組織に属して収入を得る、という生き方から脱出したかったのだ)


 実は、酵母記念日よりもっと以前に、自分で何かをやりたいと、会津にいた頃に畑を借りてブルーベリーを植えたブルーベリー記念日もあるのだけれど、その日ははっきりとは覚えていない。確か、2001年のゴールデンウィーク中だった気がするのだが・・・。自分にとって、パンに繋がる本当のスタートラインはそのブルーベリー記念日なのだが、その時点では人生を変えるくらいのこんなにも大きな転換点になるとは思ってもいなかった。(正確に言うと、人生を変えたいと思ってはいたけど、ブルーベリーだけで変えられるとは本気で思っていなかった、というのが正解か)
 その、ブルーベリー記念日から数えると18年。酵母記念日からは12年。
 どうすれば前進できるのかわからなくなり、精神的に病んでいた時期もあった。きつかったあの時間をよく乗り越えてきたなぁと、今さらながら思う。
 でも、だからこそ、ブルーベリー酵母の元種でパンを焼いたその日、

 ブルーベリーの神様が降りてきた!

と思ったことは今でもはっきりと覚えている。
 自家製酵母のパンとジャム。初めてブルーベリー酵母でパンを焼いた日に、これを組み合わせたら自分がやりたいと思っていたいろいろなことが繋がることに気づいたから。
 酵母が起こせなくなったり、元種がうまくできなかったり、数えきれないくらいの失敗を繰り返し、四苦八苦した。おかげで、成功しそうな状態を見極めたり、失敗しそうな時に修正する方法をいくらかは予想できるようになった。
 さらに、この2年ほどの間に、約1ヶ月に1度のペースで酵母を新たに起こしていくことで、元種をいい状態で繋いでいけるようになった。(つまり、ここまでに10年かかったということですね)

 パン屋になった今は、おいしかったと言って再び足を運んでくれるお客さまや、時には「パン屋を続けてくださいね!」と言ってくださるお客さまに支えてもらいながら、年中睡眠不足を抱えつつもパンを焼き続けることができている。

 諦めず、今できることを地道に続けていけば、いつかきっと行きたい場所にたどりつける。

 そう思えるようになった、13年目の酵母記念日。