素材のマリアージュの妙で魅せる洋菓子のようなコンフィテュールではなく、トーストの上にのせて食べた時に、りんごジャムなら生のりんごが頭の中に思い浮かぶような「ジャム」を作りたいと思っている。
ジャムなので、生のりんごの味ではないけれど、頭の中には赤いりんごが描かれるような。
それから、透明感のある美しい色であること。
なので、基本的に使うものは、果物と砂糖だけ。
お隣さんからゆずをもらった頃、たまたまスーパーで紅玉を売っていたので買ってきて、ゆず&アップルジャムを作った。
ただ、季節はずれの紅玉が高くて少ししかなかったので、りんごだけではとろりと固まりそうになかったため、ゆずの袋と種でペクチンを抽出してそれと合わせて作ってみたら、ぷるぷるのゼリー状のゆず&アップルジャムが出来上がった。
酸味と甘みのバランスもほどよく、期待どおりにゆずのほうが際立った、美しいオレンジ色のジャムになった。
翻って、では、どんなパンを作りたいのかと問われたら、形や材料が華やかなパンではなく、シンプルな材料のみで粉の味がよく残った、噛むほどに味わいが深くなる、そんなパンを作りたいと思っている。
身近なところで生きている酵母を育てた元種で、パンの原点に立ち返って、できる限り自然な状態で作りたい。
だから、パン職人と呼ばれるようなものではなく、いうなればホームメイドのパン、と言った方がいいかもしれない。
でも、それだから作れる味、それだからできることもあるのではないだろうか。
というより、製パン学校に行ったわけでもなく、どこかのパン屋で修行したこともないので、私が唯一自信を持てることは、自分で酵母を起こしてパンを作ることができる、というそのことだけなのだ。
そんなわけで今日も、工房に行って、元種のお世話をしている。
週末のパンを作るために。