風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

元種を作る

 またもやブログが途切れてしまったが、その間に先日仕込んだみかん+りんご酵母で、パンの元種作りが進んでいる。

 ちなみにおさらい、ということで、こちらは紅玉の皮と芯で起こしている酵母の、仕込み始めの様子。


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 発酵が進んでくると、皮の赤い色が抜けてきて、酵母の呼吸によって生まれた二酸化炭素の泡が増えてくる。さらに二酸化炭素=炭酸ガスによって、中身が浮いてくる。


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 こちらは、発酵がピークに達したみかん+りんご酵母。
 
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 水中のみかんや泡模様が美しい・・・と思ってしまうのは、理科室などにある、ホルマリン漬けとかの生体が保存されている瓶の耽美的な妖しさに惹かれるのと、どこか似ている気がする。・・・というのは、余談です。
 このみかんは、ホルマリン漬けではありませんので、念のため。


 発酵液が完成したら、小麦粉と発酵液を1:1で混ぜて暖かい場所に置き、パンの元種を作っていく。
 元種の赤ちゃん(?)が発酵したらまた水と小麦粉を1:1で加え、再度発酵させる。(これを「かけ継ぎ」という)
 同様に、かけ継ぎを全部で5回ほど繰り返すと発酵力が高まり、安定したパンを作れる元種になる。
 元種は、最初は細かい泡がたくさん出てくるのだけれど、徐々に大きな泡が生まれるようになる。


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 この大きな泡が出るようになったら、成功・・・しているはず。(実際にパンを作ってみないことには、確定はできないけどね)
 上から見たら、こんな感じ。


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 こうして元種が完成したら、小麦粉と元種を使って、パン生地をこねて、パンを作ります。
 あおいベーカリーでは元種はかけ継ぎを繰り返し、2か月くらい使っています。
 その間にまた新たに元種を起こしつつ、1か月半~2か月交替で、元種をリフレッシュしています。

元種を作る 補足

 元種を作り始める時は、発酵液20g+小麦粉20gくらいの少量から始める。
 かけ継ぎをしていくうちに元種はどんどん増えていくので、最初の分量を多くすると元種が大容量になってしまう、ということもあるが、最初は少量で起し始めた方が発酵が進みやすい、という意味合いがいちば大きい。(少量の方が中心部まで暖まりやすいので)
 たとえば、酵母液20g+小麦粉20gで起し始めた種を、1回目のかけ継ぎで40g+40g、2回目を60g+60g、3回目以降も以降60gずつで5回のかけ継ぎをしていくと、単純計算で600gの元種ができることになる。
 600gの元種がどのくらいの量かというと、300gの生地(60gのパンを5個)を作るとしたら元種は150g必要なので、300gの生地を4回作ることができる量、となる。
 また、容器と元種とのバランスも多少なりとも影響があるので、最初は小さな器を使い、徐々に大きな容器に変えてかけ継ぎをする。(大きさの違う容器を2~3種類用意しておくとよい)

 元種作りで失敗の原因の一つに、小麦粉と酵母液を混ぜて発酵させたものがピークに達していないうちにかけ継ぎを始める、ということがある。
 元種となるものの中に、酵母の数ができるだけたくさん増えたところで次のエサを与えないと、他の菌も繁殖しやすい環境を作ってしまい、パンの元種となっていかなくなる。
 小麦粉の中に酵母を住まわせ、その酵母が常に(数の上で)上位にある状態を作るのが元種作り、というイメージで作ってみてくださいね。
 
 かけ継ぎの3回目からは、元種を冷蔵庫で保存して、低温に強い菌を増やしながらゆっくり発酵させていくと、発酵力の強い元種になる。
 2回目のかけ継ぎまでで元種の中に十分な酵母が増やせていれば、冷蔵庫に入れても発酵が進む。(といっても、低温の中に入れるので、次にかけ継ぎができるようになるまでには1日以上かかる。冷蔵庫に入れた後は、次のかけ継ぎをするのは2~4日後)
 完成した元種は冷蔵庫で保存し、1日に1回、ゴムべらでかき混ぜてガス抜きをしてあげると、よい状態で長持ちさせることができる。


 完成した元種は冷蔵庫で保存し、パン作りに使った残りの種に、1:1で水+小麦粉を加えて混ぜ合わせて再発酵させ、元種として繋いでいくことができる。
 再発酵は、すぐに使わない時には冷蔵庫に入れたままで、早く使いたい時には室温に出してある程度発酵を進めてから冷蔵庫に戻して、使いたい時期に発酵の状態がいちばんよくなるように維持する。
 元種を入れておく容器はずっと洗わなくてもいいのですか?と聞かれたことがあるのだけれど、元種を新しい容器に移すことで底にあった元種が上にきて、それによって元種の発酵具合が均一にもなるので(言うなれば、天地返しですね)、最終的に保存する容器は2つ用意して、時々入れ替えながら洗いましょう。


 個人用に自家製酵母でパンを作る時にいちばん困るのは、元種が余ってしまい、かといってそれほどパンを作る必要もないことから、つなぎ続けていくことが困難になって、元種を維持することがだんだんとプレッシャーになってしまうこと。
 そうなると、パン作り自体が楽しくなくなってしまう。ゆえに、3~4回くらいで使い切るように分量を調整し、その間にあらためて元種を一から作り始めると、新しい元種ができた時にまたパンを焼いてみようかなぁという気持ちになっているので、最初の元種を限りなくつないでいこうと思わない方がいいです。
 古い元種を何年も繋いで使い続けていると書いている方もいますが、酵母の繁殖回数には限りがあるらしいので、そのことを考えても、元種は1か月半~2か月ごとに新しく作り直しながら繋いでいくことを目指しましょう。
 そのほうが元種作りに慣れることができ、自宅の中にも酵母が増えて、発酵が上手くいきやすい環境を作ることができます。
 ・・・というのが、今までの経験上の結論となっているので、参考までに。

 元種作りでいちばん大切なのは、急がないこと。
 発酵のピークの山が少し下がったあたりで次のエサ(小麦粉+水)を与えた時がいちばん、新たな発酵(酵母の繁殖)が盛んに行われ、元種もよい状態で保たれます。
 観察しながら、ゆっくりと育てる、という気持ちで作りましょう。