去年の暮れの頃から常連さんになってくれている方が、日曜日の開店時刻よりも10分くらい前にやってきて
まだ 時間早いですけど
いいですか?
というので
あるものでよければ どうぞ
と 招き入れた。
先週来た時に
桜あんパンは 来週で終わりです
とひと言言ってておいたら
じゃ 来週 来ないと!
と仰っていて、棚にちょうど昨日の桜あんパンが残ってもいたので、用は足りるだろうと思ったのだ。
パンを選ぶのを見ていたら、よもぎパンと普通のあんパン、そして桜あんパンと、あんパンばかりをかごに入れて
じゃあ これで・・・
と 言いつつ
いや 1週間分だから足りないか・・・
と、またパンを見ていたので
いちご とかどうですか?
と、いちごミルク(セミドライストロベリーとホワイトチョコレート入り)を勧めてみたら
これ いちごですか?
あ じゃ これも!
そうして、いちごミルクも入れて会計をしている間に
ここのあんパン おいしいですね~
と、しみじみつぶやいてくれたので
ありがとうございます
好評です
あんパン おいしい と言っていただくこと
多いです
と返したら
やっぱり?
そうでしょう
いやー おいしいですよ
もう 3か月くらい
毎週来ていますかねぇ・・・?
そうですねぇ
ありがとうござます
すると
そうですよねー
一生 買いに来ます・・・
と ぽつり。
思いがけない言葉に
あはは!
一生!?
いや~ 私の人生安泰だわ~
とおどけてみたら
一生 って言っても
同年代なんですから~
とお客さまが言うので
どっちが先か って話で??
実はこれまでの雑談の中で、その方がごく近所に住んでいて、生まれ年が私と1年違いの還暦を過ぎた年齢で、真岡が実家なのだけれど大学で東京に出てそのまま就職していたが、何年か前に真岡の実家に戻ってきた、という経歴まで聞いて、自分たちの年代の歩み方がどこか似たものになっている、という話をしていたのだ。
なので、ここで言うどっちが先か、というのは「どちらが先にあの世に行くか」という意味で言っている、というのも暗黙の了解で聞いているはず。
とはいえ、これはちょっと言い過ぎか、と思ったので
そういうこと言ってはいけないですね
すみません
といいながらパンの袋を手渡すと
ふふふ
じゃ
来週また来ま~す
と、ドアを開けて出て行かれた。
この場所でパン屋をしていると、時々、お客さまとの会話の中で、小説や映画の一場面のような瞬間に出会うことがある。
そして、そのたびに、やっぱりパン屋になってよかったなぁ~と、笑顔になっている自分がいる。
常連さんがドアを開けた背中を見ながら
それだけでもう、私の人生は安泰ですよ。
と、心の中でつぶやいた。