風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

砂の記憶

 今年になってから少しだけ工房の模様替えをして、ショップスペースのガラスケースの中に、小さなガラス瓶に詰めた砂を飾っている。


 時々それに気づいてくれるお客さまがいて(ちょうど子供目線の位置にあるためか、小さな子供が先に気づいて、お母さんが聞いてくるというパターンが多い)、

 これ
 砂・・・ですか?

と聞かれたりするのだが、実はこれ、私が20代後半の頃、日本のあちこちへバイクでツーリングしていた時に集めた、海岸の砂のコレクションなのだ。
 きっかけは、どこかの鳴き砂の浜に行った時に、記念のつもりで少しだけ持って帰ってきたことだった。よく、半島を旅の目的地にすることもあって、以来、立ち寄った海岸などの砂を採取するようになった。フィルムのカメラの時代、ちょうどフィルムケースが砂を入れるのにぴったりで、それに詰めて集めたものだ。砂浜といっても、場所によって砂の粒の大きさや色、石の組成などが全く違っていたりして、集め出すと結構はまった。
 お客さまにそんな説明をすると、

 へぇ〜
 いいですね!

と、目を輝かせてくれるのもおもしろい。
 お金をかけずに集めた、旅の記憶。思うところあって、これまでの写真はほとんどすべて処分してしまったので、ツーリングの思い出の品は、この砂くらいしか残っていない。



 この中には、福島の砂浜の砂もあったりするのだが、今では放射能が気になって、持ち帰る…ということは考えたりしないだろうな、と思うと、切ない気持ちになる。(実は、本当の最初のきっかけは、高校生の頃だったか家族で行った福島の塩屋崎の砂を、きれいだからと、母が持ち帰ったことに始まっている。だからよけいに、切なくなる)
 美しかった福島の海が、いつか必ず蘇りますように・・・。小さなガラス瓶の中で眠る砂を見るたび、心の中で願うのだ。