今日は久しぶりに晴れて、穏やかな小春日和。
工房の南側にある大きなこぶしの木は、先週末に一気に葉を落として、冬木立になった。
先週来たお客さまから、
パンは 趣味で作っていたんですか?
それで 実家の一部を改装して
パン屋を始めた・・・とか?
と聞かれた。
今までも何度か、お客さまからそんな質問をされたことがあるのだが、そう問われるたびに私はいつも、違和感を覚えてしまう。
なぜなんだろう?とよくよく考えてみると、最初にパンを作ったきっかけというのが、当時住んでいた奥会津の町にはパン屋がなく、さらに車で買い物に行く範囲でも、自分が食べたいと思うようなパンを作っているパン屋がなかったため、
こうなったら もう
自分でパンを作るしかない!
と、結構真剣に思い立ったからだった。
それ以前にも、自分で作ってみようかなぁ・・・と、市販の天然酵母で作ってみたことはあったのだけれど、結局のところうまくパンを作ることができず、手間暇もかかることから、自分で作るよりも買った方が早い!と、近隣で手に入るパンでなんとかガマン(?)していたのだが、
やっぱり おいしいパンが食べたい!
と、その時の私はどうしてもガマンがならなくなり、
こうなったら 本当に 自分で作る!
と、かなり本気でパンを作る気になったのだ。
さらに、どっちみち手間暇がかかるものなのだから、自分で酵母を起こしてパンを作ってみようと思い至ったのが運のツキ。ビギナーズラックで、最初に作ったものがそれなりにパンらしいものになって、さらに気持ちが高まった。
もともと、学生時代は「生物」の授業がいちばん好きだったこともあり、パン作り以前に、「発酵」にはまった。でもって、当時甘んじてしていた臨時職員の仕事から抜け出し、自分で何か(事業・・・というほどのことではなくても、自立した仕事)をやりたい!と強く願っていたので、最初に自家製酵母でパンを焼いてから2週間後にはもう、
パン屋は
私が探していた 天職に違いない!
私は 絶対 パン屋になる!
と固く決意していた。
そこからはもう、パン屋になることを前提に、人に買ってもらえるくらいのパンを作れるようになることを目標にパン作りを続けていたので、私には「趣味でパンを作っていた」期間がないのである。
だいたい、自家製酵母で安定してパンを作れるようになるまでには、たくさんの失敗と紆余曲折があり、季節によって酵母がうまく作れなくなることが頻繁にあったので、その原因は何なのか?ということをいつも考えていた。イーストを粉に混ぜてホームベーカリーでぱぱっとパンを焼く、なんてことも一切しなかったので、私にとってパン作りは、「趣味でパンを焼いてます」なんていう気軽な言葉で言い表せるものではなくなっている。
おかげで、イーストや市販の天然酵母でのパン作りはできないが、発酵の知識や経験は(それなりに)積み重なり、自家製酵母でかなり安定して作れるようにはなった。(とは言え、自家製酵母のパン作りは、今でもいつどこでコケるかわからない、綱渡り)
奥会津から実家に戻ってからは、
これからパン屋をしたいと思っている
という話をすると、
夢があって いいですね
と、よく言われたのだけれど、それも自分にとっては違っていて、パン屋になることは夢ではなく、すぐにでも実現したい目標だった。だから、真岡に帰ってから2年後、パン屋を開店した。
時々、ブログをかなり前のものから読んでくださって、パン以前に店主に興味を持って来てくれるお客さまがいるのだが、3週間くらい前に来てくださったお客さまに、
10年後くらいに 退職になるんですけど
その後をどうしよう と考えている時に
あのブログを読んで
なんだか 人生が 楽しそう・・・
って思いました
と、笑われた。
人の人生にアドバイスできるほどの人格者ではないが、いくつもの紆余曲折を乗り越えてここにたどり着いた私は、少なくてもこう言える。
自分が 本当にそれをやりたい
と 思って
今できることを やり続けたら
必ず 道が開けて
いつか 実現へと 繋がっていきますよ