11時半ごろにカランカランとドアの開く音がしてやってきた本日最初のお客様は、郵便配達の(少し年配の)女性だった。
実家に引越してから、書留などの郵便物はいつもこの女性から受け取っていたのだけれど、ここしばらくはそういう郵便物がなかったこともあり、会う機会もなかったのだが、店のほうにわざわざきてくれたので、郵便物でも?と思ったら、
久しぶりに配達に来たら
パン屋さん、始まっていたんですね
と、なんと配達ではなくてパンを買いに来てくれたのだった。
入口のところですでに、にこにこと、まるで少女のような輝く顔をしていて、こちらまで嬉しくなってしまうような笑顔だったのだが、店の中に入ってからも始終笑顔のままで店の中やパンを見渡している。そう言えば、オーブンから出し立てで、まだ表に並べていなかったベーコンエピやソーセージパン、カレーパンがあった、と思い出し
こちらも焼けています
と、パンを乗せたトレーを出して説明をすると、
じゃあ、このカレーパンを一つ
と、笑顔のまま指を差す。
そして、ポケットからかわいい小銭入れを出して代金を払い、ニコニコ顔のままカレーパンを、またもアニメの中の少女のように、大事そうに受け取った。ドアを開けて出る時に、
また来ます
と言ってくれたので、
金、土、日にやっています
とあわてて言うと、
あ、毎日じゃないんですか?
と、やっぱり少女のような顔で、なんだか、かわいいパン屋さんを見つけて嬉しくてしょうがない、というような雰囲気で仕事に戻るのだった。
そのあとには、双子の赤ちゃんをベビーカーに乗せたアヤさんが、お母様と一緒に来てくれて、そのあとには、「私です」といって、上得意様の(笑)お隣のチハルちゃんがきて、
バターロールは中毒性がありますね
といってバターロールを買っていってくれた。
午後になってしばらく人気が途絶えたので、工房の裏手でじゃがいもの芽かきをしていたら、カランカランカランとドアの開く音が。「こんにちはー」と言ってる声が聞こえたので、「はーい」と返事をしながら工房に戻ると、お客様が何かしゃべっている声がする。
その声は・・・
と言いながらカウンターに出ると、やっぱり、先週「このパンを食べたらお腹の調子がよくなった」とおっしゃってくれた、ちょっと遠い市内から3週連続で来てくれたお客さま。
どのパンにしようかカウンターに並んだパンを見つつ、結局一列を一つずつ、全種類をかごにとって、
どうせ食べちゃうのよ
と言いながら手渡された。そして、しばし猫の話をした。
そうしてそのお客様が帰られた後、途中になったじゃがいもの芽かきを終わらせて、雪でやられたのか葉が茶色になったまま復活するのかしないのか微妙な様子だったローレルの木を見てみたら、根元から新しい枝が3本!無事に生き残っていてくれてはいたようなのだが、一昨年の秋に植えたのち、去年の春も同じように寒さにやられて伸びていた枝が枯れてわき芽が出たというのに、今年も同じような状況ということは、いつになったら本当に大きくなるのか?と危ぶみつつ、茶色く枯れた葉を取り除いていたら、フェンス越しの隣家の私道のところを歩いて入ってきた若い女性が、
すみません
あおいベーカリーって こちら…
私です!
・・・車 ですか?
いいえ
歩いてきました
店は この家の裏になるので
入口は そこを右に曲がって
もう一度右に曲がったところに 小さな看板が出ていますから
と案内して工房に戻ると、間もなくカランカランカランとドアベルが鳴って、その女性がやってきた。
歩いてきた、ということだったので、
この近くですか?
と聞いてみたら、
ええ でも
最近引越して来たばかりで…
実は 母が 福島のTさんと知り合いで
Tさんから
真岡に引越すなら こういうパン屋さんがあるから
行ってごらんなさい
と教えてもらったんです
なんとそのTさんというのは、私がパン作りを始めたばかりの頃、県の農業センターであったパンの講習会で知り合った方で、自宅で焼いたパンを物産所で委託販売をしているパンの先輩。泊りがけでパンを焼くところを見せてもらったこともあり、私が実家にに引越してから真岡に遊びに来てくれたこともあるという、パン繋がりの深い人なのだ。
聞くと、その若い女性は、真岡に引越す前には京都に2年半いたとか。何度か転職ののち、今回は真岡の古家具店に就職が決まり、今度の月曜日から仕事が始まるとのこと。
古家具店・・・!
椅子の張替とか 今度教えてくださいよ〜!
と、思わずお願いしたら、
そこ(母屋の軒先)に いろいろ置いてあるので
何かやったりしているんだなぁって思いました
と言われた(笑)
京都から一度郡山の実家に戻った時に、Tさんから真岡に引越すなら教えたいことがあると言われて家を訪ねた折には、
庭にある大きな桜の木が散るところで
すごくきれいでした
日本昔話みたいだった
とも言っていた。
桜の散り際はきれいですよね〜
夢を見ているみたいですよね
と、私。
そんなことをしばし話して、帰る時には、
またちょくちょく来ますね
といって、やっぱり彼女もにこにこと笑顔になっていた。
思いもよらない人との出会い。
いつのまにか不思議な縁(エニシ)が繋がるミセになっている…?
今日も、×××HOLICのような一日。