昨夜から続く夜明け前の今日・・・と書くとややこしいが、午前0時過ぎからの仕込が終わったのが、今日も4時を回ってしまった。夜の冷え込みがここ数日急に厳しくなって、4時過ぎにストーブをつけていた工房から外に出ると、冷たい空気が体にまとわりつく。夜が明ける気配はまだ先らしく、暗闇があたりを覆っている。
思わず空を見上げたら、東の低いところに新月に向かう下弦の月が輝いていた。その少し上には、赤みを帯びた明るい星。たぶん、木星に違いない。
南にはオリオン座があって、ベテルギウス、シリウス、プロキオンと繋げて、私のいちばん好きな冬の大三角形が見つかった。北には、北斗七星の柄杓が、屋根にかかって見える。天頂に近いところにある赤い星は、火星だろうか?
そういえば子供の頃
父と一緒に 家の外で星を見たなぁ・・・
あの頃と変わらず、空に輝く星。そして、この家もあの頃とほとんど変わっていない。住む人や、置いてあるのものや、柱や廊下の色や・・・目に見えるものは変わったけれど、家の佇まいは変わっていない。
実家が改築されて、自分が住んだ歴史のない家になってしまった…という話を聞いたことがあるけれど、私の実家であるこの家は、改築も増築もしたことがないので、子供の頃のままなのだ。
私がこんな風に実家でパン屋をするなんて、誰も想像しなかった。
でも、この家があるからこそ、安心してこの先も続けていける気がする。
父が死んだ後に母が私に言った言葉を思い出す。
この世にいる人が
一生懸命生きることが
いちばんの供養なんだから・・・
住み続けていけるこの家を残してくれた両親に、ありがとうと、心の中でつぶやいた。