風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

北関東小さな旅

 パン屋を始めてから毎年恒例となりつつある、紅葉狩りを兼ねた、ささぎ(金時豆)を会津に買いに行く小さな旅。塩原から会津西街道あたりの紅葉がピークになるのが11月3日前後なので、その頃を目安にこれまで2年連続で旅に出た。
 今年も行く!と決めていたものの、あいにく今年は益子の陶器市にからんでスターネットへのパンの納品が2日3日とあり、その後は営業日、さらにヒジノワでのワンデイカフェと続いたため、8日に1日休んだ後、本日9日に行く予定にしていた。
 朝起きた頃には雲が広がっていたのでどうしたものかと思っていたら、徐々に青空が出てきてドライブ日和となり、ちょっと遅めの10時過ぎに家を出た。道がすいていたのか信号がスムーズだったのか、たいてい2時間かかる塩原に、今日は1時間半ほどで到着。
 が、塩原の道の駅に着いた時には空はどんよりと雲がかかり、これから向かうべく会津方面は靄がかかって、いかにも天気が悪そうだ。しかも、フロントグラスにハラハラとみぞれが落ちては溶けていく。

 う〜ん・・・
 このまま 会津まで行っていいものか・・・

どう見てもこの先、天気はもっと悪くなりそうなのだ。
 しばし悩んだけれど、危なそうなら峠を越えずに塩原でお蕎麦でも食べて戻ってこようと、とりあえず進んでみることにして塩原の町を目指して林の中の道(といっても国道400号線)を上がっていくと、だんだんと曇り空は低くなり、風も強くなってみぞれも大粒になってきた。

 いやいやいや これはやめた方がいいでしょ・・・

会津では紅葉の写真も撮るつもりでいたのだが、この天気では写真も撮れそうにない。
 それに、会津に住んでいた時、春先や年末に近い頃に、関東の認識の甘い車やトラックがノーマルタイヤのまま峠を越えようとしてスリップしたり雪にはまって動けなくなっているのを何度も見ている。トンネルのカーブや、勾配のきついカーブの縁など、凍結やスリップを起こしやすい場所があるらしく、同じような所で車が事故を起こしているのを、

 また スリップしてる・・・

と横目で見ては、スタッドレスタイヤのその頃の私は何事もなく通りすぎていたが、実家に戻ってきた私は今や、関東の人間となって早くも5年が経とうとしている。立場が逆転して認識が甘くなり、どこかで事故を起こす可能性が大きくなっていそうな気がする。11月とはいえ、道の駅付近にあった温度計は12時現在で4℃になっていたし、帰りが遅くなったら凍結の危険が増すことは間違いない。
 冷静に考え、これまでの貴重な経験に基づいた判断で、塩原の町中まで行く前に潔く道の駅に引き返した。そして、まんじゅうなどを買って、一息ついた。
 と、そのうちになんと、青空が出てきた。会津方面へ向かうあたりの空も、靄が晴れてきそうに見える。

 う〜ん
 ここまできて できるなら行きたいんだけどなぁ・・・

潔く諦めたつもりが、ここへきてまた悩んでしまった。そして、とりあえずもう一度上がってみて、やっぱりダメそうだったら八方ヶ原を回って帰ろう、という結論を出して、再び塩原の町中を目指して400号を西へ。
 しかし、あんなに青空が出ていたはずなのに、道を上がるとすぐにまたみぞれがちらつき、進むごとに風も強くなってみぞれの粒も大きくなる。これはもう、会津は断念するしかない。そして、途中で矢板方面の「八方ヶ原」の標識を頼りに県道を進む。
 が、その県道、塩の湯方面との分かれ道で急こう配にUターンするようになっていて、いきなり道が狭くなっている。しかも、落ち葉が道いっぱいに積もっていて、通る車は少ないことが見て取れる。

 あれ?
 八方ヶ原への道って こんなに狭かったっけ?

子供の頃、父の車で来たことが何度かあったけれど、考えてみれば自分で運転してきたのは、実家から会津に戻る時に1度だけ通ってみたことがあっただけだ。その時も、この道ってこんなに狭かったんだ・・・と思った記憶はあるが、こんなに狭かったんだっけ?
 一瞬躊躇したけれど、まあ、そのうちそれなりの広さになるだろう、という見込みでUターンするように道を上がっていくと、道幅は、車1台分。対向車が来たら、すれ違えない。ヘタな場所で対向車と出くわしたら、どちらかが待避所までバックするしかない。しかも私が通る側は崖側で、ガードレールはあってもちょっと踏み外したら転落しそうな「県道」が、いつまでたっても続いていく。
 失敗した・・・来ないほうがよかったかな…と思っても、引き返すために車の向きを変える場所もない。ここまで来たら、前進するのみなのである。
 入ってすぐに、「小太郎ケ淵」という、草団子が有名なお茶屋さんのある渓谷の看板があったが、寄り道する気持ちの余裕が持てず、とにかく道が広くなるところまで行きたいという切羽詰まった動機のみで車を運転した。
 
 どうか 対向車が来ませんように・・・

祈りつつも、何台かの車と出会ったが、いずれもなんとか退避できる場所のあるカーブの手前のところですれ違うことができ、バックするような事態にはならなかったのでよかった。
 ひたすら上りの狭い道が矢板市側になるあたりで少しだけ広くなると、橋の向こうに滝が見えた。遊歩道があるらしく(が、現在は昨年の台風の影響で通行止め)、駐車場もあったので車を停めて一息つき、写真を撮った。





まわりの山々は、秋と冬が入れ替わる直前の美しい色合いを残していた。




 そして、ようやく安心できるくらいの道幅になった、県民の森入口まできたら、眼下に関東平野越しの筑波山が!


(左手の、淡い色合いのM字形の山が筑波山

 みぞれ交じりのあの天気はどこへやら。秋晴れの気持ちのいい空気が流れた。

 会津までは行けなかったけれど、久しぶりに道幅車1台分の山道に迷い込んで緊張感満載だったけれど、思いがけない景色に出会えてこれはこれでいい気分転換になった、北関東小さな旅。