私の誕生日を、母は一度も忘れたことがなく、どこに住んでいる時にも必ず電話をかけて来て、
誕生日 おめでとう
と言ってくれた。
ある時など、私の誕生日の日にたまたま世界旅行から戻った妹夫婦がそのまま実家に帰省し、私も東京であったライブに行った足で実家に帰省していた年があったのだが、夕食を作っていた私を差し置いて父と妹たちがすでに
乾杯〜!
とごはんを食べ始めているのを聞きながら、台所にいっしょにいた母が、
今日 誕生日だよね
と私を見ながら言ったことがあった。
私:うん
母:おめでとう
私:なんだか みんなもう 食べているんですけど・・・
母:ひどい!(笑)
私:ひどすぎる!!(笑)
妹も父も、その日が私の誕生日なんてことは、さっぱり頭の中になかったのだった。
それから10年以上が過ぎて、ふと、自分の誕生日が近づいた頃に、本当に毎年忘れずに電話をくれる母のことを思い出していたら、誕生日に母から「おめでとう」と言ってもらうよりも前に、いつも忘れずにいてくれる母に感謝したくなり、自分の誕生日の日に母宛に届くように、
わたしを生んでくれて ありがとう
という手紙を書いた。
相変わらずに誕生日当日、電話をくれた母は、
手紙 届いたよ
何でしょう
ハルミも この前電話で
「私を生んでくれて ありがとう」
って 急に言っていたよ
変だね
と、妹からもつい最近、電話で同じことを言われたと話してくれた。
それから半年後、母は急にこの世を去った。
入院した1か月半の間でさえも母は、自分のことよりも先に、私のことを気にかけてくれた。
親が亡くなったあと、後悔することはたくさんある。
なんで優しくできなかったのかなぁ、とか、なんでわかってあげられなかったのかなぁとか・・・。
でも、あの時、手紙で伝えられてよかった。間に合って、よかった。
今日は、一年に一度、カウントダウンする、その日。
余命16年は長いのか短いのか・・・。