風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

ボケとクサボケ

 私の大ボケ小ボケの話ではない。
 そういう話は恥ずかしすぎるので書かない。

 草木のボケの花をご存じだろうか?
 昭和の庭先にはわりと植えてあって、早春を華やかに彩っていたような気がするのだが、今時の庭には色とりどりの園芸用草花を植えているところが多く、ボケの木を見かけることは少ないかもしれない。
 ちょうど今頃、桜が咲く少し前くらいに朱色の小ぶりな花が咲く。我が家の玄関脇にも子供の頃から植えてあって、入学式の頃に満開になっていた。その木は今でも、美しい花を咲かせる。
 3年ほど前に、一度、枝が伸びたのを私が切りすぎて、

 あれ...
 もしかして 枯らしちゃった??

という様子になったときがあったのだけれど、翌年見事に枝を復活させて、ちゃんと花を咲かせた年季の入った我が家のボケは、よくあるオレンジがかった朱色ではなくて赤みが強く、その色がなんともいえず艶っぽいのである。


 先週来てくださった一人のお客さまがそれに気づいて、

 玄関のところにある赤い花
 あれは 何ですか?

と聞かれたので、

 ボケです

と答えたところ、

 実家にもボケの木があるんですけど
 ここのボケは 赤くてきれいですね

とおっしゃったくらいに、赤が鮮やかなのだ。



 ボケの話が出たついでに、そのお客さまにクサボケを知っているかどうか聞いてみた。
 クサボケは、子供の頃には小学校の土手のあたりによく咲いていたのだが、今は土手そのものがコンクリートで土止めをしてしまったところが多く、それに伴ってクサボケも、もう何十年も前から見かけることがなくなってしまった。
 クサボケはボケとそっくりの花を咲かせるのだが、背丈が15cm位にしか伸びない。でも、ボケと同じようにコロンと大ぶりな実がなり、一般的にはその実を「地梨」と呼ぶことが多いようだが、このあたりではその実のことを「シドミ」と呼んでいた。母によると、

 シドミで作ったお酒が とってもいい匂いがして
 果実酒の中ではいちばんおいしい

らしく、私はその言葉を妙に印象深く覚えていて、いつかシドミ酒を飲んでみたいと思っているのだが、残念ながら今まで一度もシドミ酒にお目にかかったことはない。
 母からその話を聞いたのは、私がお酒を飲めるような年齢になっていた時だったので、そんなにおいしいなら自分でシドミを採ってきて作りたい!と思ったものの、前述のごとくクサボケ自体が見かけなくなってしまったこともあり、その時点で実を見つけるのは至難の業となっていたのである。(ちなみに、地梨を売っている、というのも見たことがない。東北なら売っている可能性もあるのでは?と会津にいる時にふと思ったことがあったのだが、よくよく調べてみたところ、クサボケの北限は北関東らしく、会津ではクサボケそのものが生えていないのだった)
 ところが!何年前だったろうか。クサボケがたくさん咲いている場所を身近な所で発見したのである。それは、真岡の井頭公園。春先に散歩していたら、

 うわ〜!
 クサボケの花畑!!

というくらいに一面に花が咲いているところを見つけてしまったのだ。



 こ、これは
 秋になったら シドミが山ほど摘める!!

と、心浮き立ったことは言うまでもない。
 頭の中に強力にインプットして、実がなる秋の頃には絶対に忘れずにこよう!と記憶し、実際に9月頃にわくわくしながら井頭公園に足を運んで探してみたところ、

 あれ?
 クサボケは・・・??

クサボケの木そのものさえも見つからないのだった。

 なんで???
 枯れたわけでもないだろうに・・・

と、よくよく地面を見たら、夏場に何度か刈り払い(下草刈り)をしているのだろう。きれいさっぱり地面が見えていて、草から何から、足を取られることなく林の下に入ることができるようになっていた。これでは花が咲いたクサボケの木もばっさりと切られ、実がなることもなくなってしまう。
 考えてみれば、公共の公園なのだから、下草刈りは定期的にされて当然だ。
 さらに、県立公園なので、もしも実がなっていたとしても、採取は禁止である。
 しかして、シドミ酒は、幻の果実酒のままとなった。
 ちなみに、我が家のボケの木になった「ボケの実」で作った果実酒が我が家にはあるのだが、ぶっちゃけ薬くさいような味がして、全くおいしくない。母が言った、シドミ酒が香りがよくていちばんおいしい…という話は本当に本当なのか、実は半分疑っていたりする。
 果たして、真実が明らかになる日は来るのか?

 シドミ酒は本当に香りがよくておいしいのか?

は、私の人生の中で真実を知りたい7不思議の一つ・・・と言いたいくらいに気になる問題なのである。