風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

オレンジのコンフィとサングリア

 オレンジピールを作るつもりで、初めて国産のブラッドオレンジを買ってみたのだけれど、皮が薄めなのと香りが今一つ足りない気がして、一度作ってみたかったオレンジのコンフィ(砂糖漬け)に挑戦することにした。
 コンフィを作るための作業は、基本的にはオレンジピールと同じで、蜜を少しずつ濃くしていって沁みこませ、それを乾燥させるという手順なので、作業そのものはそれほど難しくはないのだが、時間がかかる。
 ただ、一つだけ気をつけなければならないのは、シロップの煮詰め加減。それによって、オレンジピールやコンフィの柔らかさ、舌触りがかわってしまうので、そこはコツがいる。

 コンフィのほうは、まず、丸ごとのオレンジに砂糖をしみこませるための穴をあけ(といっても、竹串などでプツプつと軽く刺す、ということですので誤解なきよう)、そのあとに2〜3回茹でこぼして、それをまた丸ごと水につけて1日以上置いてアク(皮の苦み)を抜く、という思いもよらない作業があった。
 中身は柔らかいのに皮まで柔らかく、しかも苦みを抜いて作るのはどうするのだろう?と思いながら作り方を調べたところ、その方法を知って、何とも大胆なやり方にちょっとびっくりした。丸ごと1日も水に漬けて、味まで抜けないのかな?とも思うのだけれど、あく抜きはしなければなるまい。
 とにかく、あく抜きに丸1日放置、というところから始まるので、時間がかかる。
 で。
 ブラッドオレンジは3kg分を買ったので、全部をコンフィにするには多すぎるし、他に何かないかなぁ?と考えていて、そうだ!あれを作ろう!!と思い出したものがあった。
 それは何かと言いますと、自家製のサングリア。東京に住んでいた数十年前に、スペイン料理店で飲んだサングリア(もちろん、お店の自家製)がとてもおいしかったことに刺激され、それ以来サングリアは大好きな飲み物となっている。作り方は簡単で、基本は赤ワインにオレンジやレモン、りんごなどを入れて1週間くらい寝かせるだけ。その店のレシピも公開されていたので、その当時作ってみたこともある。
 とはいえ、輸入のオレンジやレモンは防かび剤などが使われているので、それで作る気にはなれなず、冬の間に国産レモンが出回るものの、国産オレンジまで手に入れることはなかなか難しく、輸入オレンジで作ってみたことが何度かあったものの、その後は作らずじまいになっていた。
 それが、数年前に冬の間に東京で国産(確か熊本県産だった)のオレンジを見つけたことがあり、何十年ぶりかでサングリアを作ってみたところ、これがすばらしくおいしくて、

 う〜ん
 自家製サングリア最高〜!

と、再び「サングリア飲みたい!」という願望に火がついたのである。
 ところが、ここにきて国産レモンと国産オレンジが手に入ったものの、りんごはもう季節ではない。スーパーには並んでいるけれど、秋に収穫して保存していたものなので、旬のものではない。他に何か入れられそうな、今が旬のくだものはないか?と考えて、

 そうだ!
 いちご!!

いちごは今が旬真っ盛りではないですか!それも、真岡はいちご生産日本一の、いちごの国。
 これまた以前、いちごをホワイトリカーにつけたいちご酒を作ってみたことがあったのだけれど、色と香りのいいおいしいリキュールになった。赤ワインといちごの相性もよさそうだ。
 ということで、赤ワイン(今回は手ごろな値段のチリワインを使用)に国産ブラッドオレンジ、国産レモン、真岡のいちご、それにスパイスとしてシナモンスティック、砂糖適宜を入れて、冷蔵庫に入れて待つことしばし。
 本当なら1週間くらい待てばよいのだが、久しぶりのサングリアを待ちきれずに3日目くらいに味見をしてしまった。一口飲んで、

 うま〜い!!
 やっぱり自家製サングリア最高〜!!!

毎日少しずつ飲んでみると、味がなじんで熟成していく。
 最初はフルーツの香りが際立っていたものが、ワインと渾然一体となっていく。そのどれもがおいしい。

 ・・・おっと。今日は、ブラッドオレンジでオレンジコンフィを作った話を書くつもりだったのに、完全にサングリアの話になってしまった。
 オレンジコンフィは、営業日に重なってしまったがゆえに作業はゆっくりと進み、月曜日にシロップ漬けが終わって、昨日、シロップを切って網に上げて、自然乾燥をして仕上げた。


 お菓子を作るならまるごとのものを飾り用に使うのだが、お菓子を作る気はほとんどないので、刻んでオレンジピールと同じように、パンのフィリングにする予定。
 自分で言うのも何だが、市販のオレンジピールはただ甘いだけでオレンジのいい香りがほとんどしないことが多い気がするけれど、手作りのオレンジピールはわずかな苦みと共に、甘やかなオレンジの香りが心地よい。
 時々、

 オレンジのパンは どれでしたっけ?

と言って買っていってくれるお客さまがいる。そんな時は、手作りオレンジピールを気に入ってくれたのかなぁと、嬉しくなる。
 ちなみにアロマテラピーでは、オレンジの香りにはしフレッシュ、リラックス、安眠の効果があるとされている。そんなところも、オレンジのパンに惹かれる理由かもね。