葉に斑が入ったエルダーの苗を買ったのは、かれこれ30年近く前。
当時ハーブブームがあって、各地にハーブ園がいくつも開園した頃だった。
あの日のハーブ園の風景を、何となく思い出すことができる。
暖かな春の日。
駅からハーブ園まで歩いて、ちょっと汗ばんだ。
桃が満開になっていて、道すがらのお寺だったか神社の境内のようなところで、地元の小さな桃まつりみたいのが行われていて、そこで売られていた農家の自家製の桃の瓶詰めを買った。
妙なことに、そんなことを覚えている。
ちなみにエルダーは、日本名で西洋ニワトコ。薬効があり、西洋では魔女の木とも呼ばれているらしく、秋に熟す実をジャムにでるのも私の興味をそそった。
斑入りではない普通のエルダーの苗も珍しかったのだけれど、葉に斑が入っているエルダーは葉の様子だけでも美しく、ハーブ園で苗を見つけた時には迷わずに購入した記憶がある。
それを鉢植えにして、その頃住んでいた横浜のアパートのテラスで育てたところ、日当たりのよかったそのテラスでエルダーは元気に育っていった。
4年ほど住んだ横浜から会津に引っ越す折りにも、鉢ごと引っ越し屋のトラックに積んで持っていったのだけれど、日当たりの悪かった会津の町営住宅のベランダではなかなか大きくならずに、それでも真岡に引っ越しをする時まで生きながらえた。
真岡に移住してからようやく庭に地植えにするチャンスができたので、張り切って植えたものの、植えた場所が合わなかったのか、1年目は順調に育ったはずの枝が枯れてしまい、その後は根元から何度か新梢が出てきても太くならずに雑草に埋もれ、ようやくまわりの草刈りをしたと思ったら間違って切り取ってしまいを繰り返して、2年くらい前にはついに息絶えてしまったのか、あったはずの枝が全く見当たらなくなった。
それが、去年の春になって、ひょっこりと芽を出した。
もともと生命力は強いらしく、剪定した枝を鉢に刺しておくとほとんどが上手く根付くのだけれど、確か1年くらいはまったく枝を見ていなかった気がするので、本当にひょっこりと復活したように生えてきてびっくりした。そして、嬉しくなった。
とはいえ去年は、ひょろっと伸びた枝が、太くならないままにこの冬を迎えた。
そして、先日、エルダーはどうなっているかと見てみたところ、新芽が出ているのを発見!
今年は元気に育って欲しいなぁ。
でも、よく考えてみると、私が生きている間に大木になることはないのかも。
人間と植物に流れる時間の感覚は、全く違っている。
それでも大きくなって欲しいと願う。
そう思わせる植物の生命力って、不思議だよね。