朝からの台風による暴風雨は、お昼頃に治まって、午後には青空が。
三時過ぎに荷物を出しに外に出たついでに、井頭公園に寄ってみた。
10月・・・そう言えば、秋のバラの季節ではなかったかなと、ふと思い出したのだ。
公園の入口には、春とは違って「バラ園」と書かれた小さな案内板が出ているだけだったけれど、その看板が出ていることで、花が咲き始めていることがわかる。
バラ園に入ると、朝の暴風で花が散らされた様子。それでも健気に、ポツリポツリと返り咲きの花が咲いている。
春の華やかさとは違って咲く花の数はわずかだけれど、色の鮮やかさは春に劣らず、少しの花なのに、ほんのりとバラの甘い香りも漂っていた。雨上がりの湿った空気だったから、よけいに香りが立っていたのかも・・・。
ふと、忘れ得ぬ人のことを思いだすことがある。
昔同じ時間を過ごした人だったり、死んでしまったタマやタマが生んでいつしか帰らなくなってしまった子猫のことだったり、あるいは、この世ではもう会えなくなった人のことだったり・・・
そんな人たちを思い出した時の、愛しくて切なくて頬がほんのりと温まるような気持ち・・・。秋のバラの匂いは、どこかそれと似ている。
公園からの帰り道、まだ明るい空に大きな月が見えた。
明後日が満月・・・ということは、今夜は十三夜。
旧暦の九月十三日の月は、「後の月」と呼ばれて、これもお月見の月なのだとか。
人恋しと泣けば 十三夜
月はおぼろ 淡い色ぐあい・・・
心の中で、井上陽水の歌が回り出す。月を見ながら、いつの間にか口ずさんでいる。