風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

帰省

 2011年の年も押し詰まった12月26日に、それまで住んでいた会津から実家のある真岡に引越しをした。
 両親はすでに亡くなり、その時点で実家は一時的に空家になっていたので、以来、私にとって「帰る場所」であったところが、そのまま「住む場所」になった。
 なので、お正月やお盆に帰省する、ということが私にはもうなくなってしまったのだ・・・ということを、ふと思うことがある。

 高校生の頃に、父方の祖母が亡くなり、その時に叔母(父の妹)が、

 もう 帰るところがなくなっちゃった・・・

と、ぽつんと寂しそうに言ったことを、今でも覚えている。私の父も母もまだ若かったけれど、何となくその感覚が、わかるような気がした。
 自分の親がなくなるのは、想像もつかないくらい遠いことと、その時は思っていたが、いつの間にか「その時」がやってきて、父が亡くなり、その6年後には母が亡くなって、私が「帰る場所」は、誰も迎えてくれる人がいない場所なった。時々家の様子を見に、あるいはちょっと息抜きの気分で実家に戻った時には、何だか仮の家に来ているみたいに数日を過ごし、その頃住んでいた会津に戻る時には、またこの家には誰もいなくなって時間が止まるんだ…という感覚を持って、家の鍵を閉めていた。

 その実家に住むようになって、丸3年。
 今まで引越した場所は、いつでも「仮の住処」という感覚だった。いつかはここを離れて、また違う場所に引越したくなるんだろうな・・・と、心のどこかで思っていた。
 でも、今いるこの場所から引越すことは、もうない。そう思えることが、私を安心させてくれる。
 子供の頃に家族と過ごした記憶や思い出がたくさん詰まったこの家で4回目の新年を迎えることは、私にとって、心が帰省することと同じ・・・そんな気がする。