風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

夜明けの群青

 パンを焼く、という一日の仕事が終わったと思う間もなく、夕食の準備をして夕食を食べると、とたんに睡魔に襲われる。
 
 ね、眠い・・・

と、こたつで足を温めながら、耐えきれずにそのままこたつむりになって寝てしまう。ま、いつものことなのだ。
 で、

 はっ!

と目が覚めて時計を見ると、10時を回っていたりして、

 い、いかん!
 え、え〜っと
 私は 何をしないといけないんだっけ?

と考えてみると、

 そうだ、
 白いんげんを戻してあった
 あれを 桜あんにしなくては!

と、よろよろと立ちあがり、とりあえずトイレに行って、喉が渇いていたのでお茶を飲んで一息ついてから、やおら桜あんを作る。
 そして、道具を洗って片付けて時計を見ると、

 い、いっか〜ん!
 もう12時だ!!

ちなみにここで言う12時とは、午前0時のことである。
 そして、そこから明日の(ってもう、12時を回っているので、今日なのだが)パン生地の仕込が始まる。
 生地の種類が5つあり、1つの生地を仕込むには、計量から次の生地に取りかかるまでの時間が30分くらいかかる。さらにそこにフィリングを入れるものもあるので、フィリングの準備だけでも30分はかかる。
 使った道具の片づけと、翌日あるいは翌々日使うための酵母のお世話もあって、なんだかんだ、仕込には4〜5時間がかかることになる。
 ということは、12時過ぎに始められたとしても、終わるのは午前5時。
 今日というのか昨日というのか、金曜日から続く土曜の深夜に仕込みを始めたのが1時近くなってしまったので、終わったのは6時。すっかり夜が明けて、明るくなって、普通に朝・・・っていうか、普通は起床する時刻である。
 そこから自宅に戻って残っている片づけをして、お風呂に入って、寝たのは7時。とりあえず、布団に入って寝ないことには疲れは取れない!ということで、布団にもぐって寝るのだか、そこからして間違っていることはわかっている。目覚まし時計をセットしていたって、布団の中に隠して時計を止めたまま眠りこけて、

 はっ!

と目が覚めたら、9時だった!

 うわ〜!
 寝過ぎた!!
 間に合わない!!!

寝過ぎたといっても、この場合、睡眠時間1時間で起きるべきところを2時間寝てしまった、ということなのだが、あわてて着替えて(この期に及んで、ちゃんとパジャマまで着て寝ている)仕事を開始するわけだが、通勤時間徒歩10歩といえども、明らかに、

 寝坊した〜!

のである。

 一人でパン屋を営んでいると、そういうことが、時々ある。
 で、昨日は、奇しくもそんな日であった。
 それゆえ、せっかく開店時刻直後に来ていただいたのに、パンが、1種類しか焼けていない・・・という事態を目撃して落胆…という目に合わせてしまったお客さま、たいへん申し訳ありませんでしたm(_ _)m
 しかも昨日は、ありがたくも前日に予約してくださったお客さまがいたので、その分にプラスして生地を多めに仕込んだため、丸めても丸めても生地がなくならず、焼いても焼いても次のパン生地の成形が待っていて、生地の成形の途中でお客さまがいらして作業が中断し、の連続になり、9時半から3時くらいまで、トイレに行くこともできず、水も飲まずにひたすらパンを作り続けていた。
 そして、大量に仕込んだパン生地を、1つも無駄にすることなくパンにした。やったぜ!(感無量)
 パンの焼き終わりが3時過ぎになったため、その後の片付けもあとに引きずり、工房の片づけが終わって自宅に戻ったのが、8時近く。(ここで言う8時は、夜の8時である)
 そこから夕食を作って食べて・・・
 するとやっぱり、

 ね、眠い・・・

うたた寝してしまうのである。
 そして、

 はっ!

と目が覚めて時計を見る。
 
 あれ!?
 何時??
 わっ やべ〜
 11時半!!!

ちなみにここで言う11時半というのは、夜も更けた午後11時半、ということである。
 そこから夕食の片づけをして、今日仕込むパン生地の計画を立てて、何だかんだで工房に行って生地の仕込を始めたのが、1時半くらいになってしまった。1時半=午前1時30分ということである。
 しかし、ここまで来るとテンションが上がってくるらしく、昨夜は仕込の間じゅう眠くて仕方なく、生地をこねながらつい立ったまま眠りこけていたのに、今日はちっとも眠くならずに、生地を仕込み終えた。今日も、朝6時に。
 そして途中、午前4時半ごろ、

 そうだ
 いつも 5時には明るくなっている今日この頃だけれど
 4時ごろから 空は白んできているのだろうな
 ということは
 そのくらいには 夜明けの群青が見えるはず

とふと気がついて、工房の裏口を開けて空を見上げてみたら、

 うわ〜
 きれい・・・

裏口を開けたところに見える東の空は、群青からもっと光を含んだ水色になっていて、いかにも春らしい透明で瑞々しい青い色をしていた。そして、まだ寒くてストーブを点けていた工房から出した顔を撫でたのは、早朝のひんやりとした清々しい空気だった。

 やっぱり
 あと30分早く気がついていたら
 本当の 群青の空が見られたんだろうなぁ・・・

美しい水色の空とひんやりとした緩やかな風に吹かれて、自然と笑顔になった。そして思わず、深呼吸した。

 夜明け前がいちばん暗い、なんて、それは嘘だ。
 夜明けが近づくその瞬間、空は一刷毛の光を湛え、透明な群青から瑞々しい縹色へと色を変えていく。
 星が一つひとつ明かりを消して、太陽が地平線にオレンジ色の光を放ち、世界を彩っていく。

 パン屋の仕事をすることで、今まで見ていなかった時間帯の景色に出合う。それもまた、秘かな喜びだったりする。
 そうだ。できることなら、仕込を終えて外に出た瞬間に、夜明け直前の群青の空に出会う。というタイミングにしたい。
 ということは、4時にはきっかり仕込みを終えたいので、遅くても11時には仕込を開始する、ということだ。
 うたた寝をせずに、今のパターンを2時間前にずらす。そんなことが、今の私にできるのだろうか?



 さて、そんなところで問題です。
 このブログの話の中には、何日分の出来事が書いてあったでしょう?