露草。
私のいちばん好きな花が、今年も咲いた。
子供のころからこの花の、透き通った青が好きだった。
万葉の時代には、「鴨頭草」と書いて、つきくさ。花の色を、カモの頭の鮮やかな色に喩えたのだろう。
その昔、染め物の柄の下書きに、この花のしぼり汁を使ったとか。すぐに色が褪せるので、下書き用として重宝されたようだ。その時の呼び名は、「縹色(はなだいろ)」
朝から午前中にかけて花を開き、太陽が真上に来る頃には花を閉じる。
楚々とした姿とは裏腹に、丈を伸ばして倒れた茎が地面に接すると、土についた節の部分から根を出して、新たに立ち直ったりする力強さも持っている。
儚いもの。移りゆくもの。
その中でも変わらない、美しいもの。
どこか潔い、この花の突き抜けるような透明な青は、そんな心を表している気がする。