風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

つゆくさ

 露草。
 私のいちばん好きな花が、今年も咲いた。
 子供のころからこの花の、透き通った青が好きだった。

 
 万葉の時代には、「鴨頭草」と書いて、つきくさ。花の色を、カモの頭の鮮やかな色に喩えたのだろう。

 その昔、染め物の柄の下書きに、この花のしぼり汁を使ったとか。すぐに色が褪せるので、下書き用として重宝されたようだ。その時の呼び名は、「縹色(はなだいろ)

 朝から午前中にかけて花を開き、太陽が真上に来る頃には花を閉じる。
 楚々とした姿とは裏腹に、丈を伸ばして倒れた茎が地面に接すると、土についた節の部分から根を出して、新たに立ち直ったりする力強さも持っている。

 儚いもの。移りゆくもの。
 その中でも変わらない、美しいもの。
 どこか潔い、この花の突き抜けるような透明な青は、そんな心を表している気がする。