午後、25kgの小麦粉を入れている容器を母屋脇にある外の水道で洗うために水を出したら、ブルブルッバタバタッという音を立てて、何かが飛んできた。
ん?
と、音のする方に目をやったら、
あら!?
ハグロトンボ!!
水場とは言え、私が行く前は水を使ってはいなかったので乾いた場だったのに、水の気配を感じて来ていたのか?
飛んできたハグロトンボは、ぱたっと傍らに落ちるとそのまま横倒しになって、動かなくなった。
いつも飛んでいるハグロトンボを見つけた時には、いったいあんな飛び方なのになんて逃げ足が早いんだ!?というくらいに、近づいたそばから人の気配を敏感に察知してひらひらと飛んでいってしまい、今の今まで一度もカメラに収められたことがなかった。
しかし、水道の脇のベランダの上に倒れたハグロトンボは、私が羽を触っても動かすこともできず、写真を撮ろうと、流しのところに生えているカキドオシの葉っぱの上に乗せても、よろよろとようやく止まっているのが精いっぱいのようだった。
逃げるなど、もうそんな力は残されてはいない様子。
写真を撮ったあと、我が家の猫にいたずらされたりしないよう、陰になっている方へ移してあげた。
ひと夏の短い命が、誰にも知られずひっそりと、静かに終わりを告げる・・・
ハグロトンボが飛ぶ姿を見ていると、いつも、どこか別の世界から飛んできた使者のような気がしてならない。