それは、土曜日の朝のことであった。
その日の真夜中の仕込を終え、2時間ほどの睡眠ののち、目覚まし時計が鳴る直前にはっと意識が戻るがごとく目が覚めかけた瞬間・・・
枕元の右肩上の方でざわざわざわと、2〜3匹の丸い生き物が話していたと思ったら、そのうちの1匹がこっちを向いてひと言言い放ったのであった。
あんた もう 出来てまっせ!
えっ・・・!?
そして私は、目覚まし時計に起こされることなく、完全に目が覚めたのであった。
夢ではない。確かに、その言葉を聞いたのである。
もやしもん。。。
ついに 私も そこまで来たか・・・!?
いや、ついに私も幻覚幻聴を見るほど疲れ切ったのか・・・という意味ではない。
ついに私も、酵母が肩の上に乗って味方してくれるレベルに達したのか・・・という意味である。
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ちなみにこの写真は、もやしもんこと菌の写真ではありません。
自家製酵母で作った丸パンが、いかにも酵母のような形になったので記念撮影したものです。
『もやしもん』というコミックをご存じだろうか?
私自身、コミックを読む習慣(?)はないのだが、たまたまきっかけがあって、酒の糀を作っているもやしや(麹屋)の息子が主人公になっている漫画を読んだところ、発酵のあれこれが満載だったことも相まって、はまった。アニメにもなっているのだが、その主人公、酵母などの菌が見える、という設定になっている。
コミックの主人公の実家は酒を造るための糀を作っているので、彼の肩に乗っているのはオリゼーなのだが、私の場合、パンを作っているので、今日見たもやしもんはセルビシエであった。
ちなみに今日聞いた言葉がなぜか関西弁だったのは、そのコミックの作者が関西出身に由来しているのではと思われる。(コミックやアニメに出てくるもやしもんは、関西弁ではありません)
思いもしない衝撃の体験で一気に起き上がり、思わず右肩あたりを意識したが、その時点ではもう、もやしもんの影すらもなかった。そして寝る前に仕込んだパン生地を工房に見に行くと、確かにぴったり、一次発酵が終わっていた。
夜中にこねた生地は、夏から秋へと移行中の昨夜の気温で、温めるためのお湯の入れ具合をどう調節するかを微妙なところで悩みつつ、自分の勘頼りでフードコンテナーに入れて保温した。朝起きた時に過発酵にはなっておらず、かといって発酵が間に合っていなくて待ち時間が必要になるようなことのない絶妙な調整ができているかどうかは、朝起きてみなければわからない。しかも、寝坊してしまったら、絶妙なタイミングをはずしてしまうこともある。生き物の力を借りて作っているパンは、それほど繊細なのである。
う〜ん・・・
もやしもん。。。
そのレベルになりたいとは思っていたが、本当に見えるようになるとは・・・。
その割には、なぜぶどう酵母でパンの元種がうまく作れないままなんだろう?
疑問は尽きないわけだが、この世には、本当に菌が見える能力を持っている人がいるらしい・・・ということを信じたくなるような出来事であった。
っていうか、明日の朝ももやしもんが起こしてくれるのかな?と、ちょっと期待しつつ。。。(笑)