時折、パンを買いにいらしたお客さまから、
この建物は元からあったんですか?
と聞かれることがあるのだが、築55年の昭和の日本家屋である自宅に雰囲気を合わせるように、戸や窓といった建具に古家具店で買ったものを使っていたり、インテリアに母が使っていた足踏みミシンを置いたりしているせいか、工房になっている建物が前からあったもののようにも見えるようだ。
実は、パン工房の建物は、那須町にある非電化工房で行われている「地方で仕事を創る塾」(通称:地創塾ちそうじゅく)を受講したことがきっかけで知り合った仲間が、3ヶ月間ここ(自宅=実家)に寝泊まりして、パン屋を開店するべく、保健所の許可が取れるように新たに造っている。
その、仲間に巡り合うことになった地創塾は現在でも行われていて、いわゆる私たちの後輩が続々と生まれて(?)いるのだけれど、開講のたびに先生が、仲間(ほとんど素人)の手によって作られたパン工房の話を必ずするらしく、密かにどこかで興味を持ってくれている人たちがいるようなのだ。
それが今年は、栃木県内から受講している人がいたこともあってか、2期にわたって見学に来てくれた人たちがいた。
おもしろいことに、地創塾生というだけでなぜかすぐに話が通じ合い、不思議なくらいにすぐに打ち解けあって話が弾む。そして、期を越えて、自然と仲間意識が生まれてしまう。
そんな中、先日ブログに、ジョウロを使った照明を工作中(だけれど、電気系の接続は電気屋さんに頼まないとかな〜)という記事を書いたところ、それを見た地創塾つながりのOさんから、メールが来た。
ブログを拝見しましたが、ジョウロの照明は多分難しくないと思いますので、まだ作ってなければ今度作りに行きましょうか?
(現在、職業訓練校で電気工事を修行してますので、法律的に問題ないものであれば、だいたいできます)
お気軽にお知らせ下さい〜( ^ω^ )
何とも嬉しいではありませんか!
本来なら、あれこれ試しながら照明付き看板を作りたいところだが、電気屋さんに頼むとなると、すでに出来上がったものを渡して、ここにこれをこういう風に付けてください。という頼み方しかできない。そこに付けてはもらったけれど、やっぱりこっちのほうがいいなぁとか、ここをこういう風にした方がもっといいかも、と思ったとしても、それを新たに作り直したりやり直して試行錯誤する、ということは難しくなる。
で、接続してもらったけれど、なんとなく納得がいかないままに、
まあ いいか・・・
とそれで終わってしまったりする。
しかし、仲間内ならそういうあれやこれやを相談しながら作れるし、それをいっしょに楽しめたりもする。Oさんからのメールはまさに、渡りに舟であった。
さらに、作り直したいと思いつつ、どうやれば手軽に耐久性と密閉性のあるものが作れるか?で悩んだまま中断していた手作りホイロ(発酵機)についても相談に乗ってほしい。との一文も付け加えて、
よろしくお願いします!
と返信したところ、同じ地創塾同期生の見学を兼ねて、本日早速、Oさんが来店してくれた。
専門は水道で、建築会社にいたことがあるのである程度の図面なら引ける、というOさん、現在職業訓練校で電気関係の講座を受講中、さらにあれやこれやいろいろなものをDIYしていて、私からすると憧れのスキル満載である。で、とりあえず、照明付き看板のほうから、デザインや取り付け場所について確認を始めると、メジャーやら画板付きのメモ用紙をカバンからさっと取り出し、簡単な見取図を書いて、そこにメジャーで測った数値をささっと書きこんだ。
さすが・・・
あまりの手際の良さに、思わず身を乗り出してそのメモを見る私。
ジョウロの口に コードを通して
それを こんな感じでレセップにつないで・・・
この柱を一部平らにこう切って
そこに こんな感じで針金でつけたら いちばん簡単にできるかなぁ〜と・・・
「やっています」ということがすぐにわかるように照明をつけたいので
入口近くの このへんに建てたい
と説明すると、電源を採る場所を確認して、こういうルートで一部埋設してこうもってくればよさそうというOさんの見立てが、私があらかじめ頭に描いていたものと一致したので、
そんな感じで よさそうです!
するとOさん、
じゃあ 材料がいくらくらいになるか
ホームセンターで 使えそうな材料を探して
見積もり出してみますね
す、すごい!もう、このままこれを仕事にできそうな、プロ仕様!!
同じように、ホイロ(発酵機)についても、サイズを測り、材料の検討をあれこれ交わしながら絞り込んで、
じゃあ こっちも
何を使うのがいいか
ちょっと ホームセンターで探してみます
これ 急ぎますか?
いえ
とりあえず 今のところ これでも間に合っているので
急がなくても大丈夫
うん じゃあ
のんびり 考えてみますね
もう、大船に乗ったつもりでお任せしますよ〜(心の声
実は、これを手伝ってもらう報酬的なものをパンで支払うことで了解してもらっていて、先週、パンがちょっと多めに余ったので先に送っているのだけれど、帰り際、今日も食パンが残っていたので、
食パン 持って行きます?
仕事しろよ〜 って
先払いで プレッシャーをかける!?(笑)
とやや強引に渡したら、一緒に来ていた地創塾同期のIさんが、
食い逃げしたりして?
するとOさん、
ぱったり連絡がとれなくなったら
逃げたと思ってください
といって笑った。
実はOさん、現在の立場上、現金よりも現物でもらった方が都合がいいらしく、私にとってもその方が助かるので、丸く収まっているのである。
さらに、照明付き看板を試行錯誤しながらいっしょに作ることで、
そうすれば あおいさんも
ちょっとした細工だったら
自分でできるようになるでしょ?
と、そこまで考えていてくれたのだった(感動。。。
私が、非電化工房「地方で仕事を作る塾」を受講した初日、先生から言われて印象に残っている言葉は、
ここにきて いちばん持って帰っていってもらいたいものは
「仲間力」です
という一言だった。
地創塾を卒業してから、3年。
期を越えて繋がった仲間力は、私が生きていくための確かな力になっている。