土曜日の朝8時半、50分の睡眠ののち、仕事を始めようとしたところでケータイが鳴った。
出てみると、
バターロールの予約をしたいのですが
できますか?
という電話だった。
はい どうぞ
いくつ 予約なさいますか?
と聞いてみたら、
10個 予約したいんですが・・・
え!?
10個・・・
たくさんですね
ええ〜っと・・・
実は明日臨時休業するのは法事があるためで、その時に伯母にバターロールを持っていこうとその分も含めて今日は生地を多めに仕込んではおいたのだが、せいぜい15個くらいの予定なのである。
う〜ん
10個 取り置きできるかどうかわかりませんけれど
できるだけ 確保しておきます
あ
10個が無理なら
明日も買いに行くので・・・
申し訳ありません
明日は 臨時休業させていただくんです
そうなんですか!?
じゃあ できるだけでいいので
予約してもいいですか?
わかりました
一応 10個ということで
お聞きしておきますね
無理言ってすみません
一応・・・でいいです
ありがとうございます
今までお客さまに「おすすめは何ですか?」と聞かれるとたいてい、「バターロール」と答えているのだけれど、そうして買っていかれたお客さまがそのままバターロールファンになってくれたことも多いようで、さらにそういうお客さまが口コミしてくれる時には、「バターロールがおいしい」ということまで付け加えてくれているらしく、初めて来たお客さまから、
バターロールがおいしいって聞いてきました
言われたことが、今までに何度もある。
とはいえ、これまではたいてい、1個とか2個を買っていくのがせいぜいで、常連さんが1週間分で3〜4個かごに入れてくれることが関の山、といったところだった。
それが今日は何だ?10個の予約って、誰かに配るのか?しかも、開店時刻まで3時間もあるっていうのに。
やや不可思議な感じを抱きつつも、とにかく早めにバターロールの成形に取りかかなければ、と思いつつ、最初に焼きあげているカンパーニュやライ麦パンなどハード系のパンのほうを進めるも、外は雲って薄暗いうえに肌寒く、開店時刻が過ぎてもお客さまの気配がなくて、
あ〜
今日は お客さま少なそうだなー
と、私の気持ちはやや下がり気味。
と、開店時刻が過ぎて1時間経った頃、また電話が鳴った。表示を見ると、登録しているお客さまだった。それも、いつもバターロールを予約して、宇都宮から来てくれる方だ。
あ Yです
こんにちは
あの〜
バターロール予約したいんですけど・・・
思わずくすっと笑ってから、
バターロール・・・ですよね
今日 10個の予約をしてくれた方がいて・・・
え
そうなんですか?
じゃあ・・・
そうですねぇ・・・
たぶん あと
5個くらいは大丈夫だと思うんですけど
あ じゃ
5個 予約していいですか?
ちょっと 焼き上がってから数を確認しないとわからないんですけど
5個 あったら確保しておきますね
すみません
お願いします
なんだなんだ?今日はバターロール大量予約者が続くなぁ・・・と、作業を再開するうちに、ポツリポツリとお客さまがやってきた。
そしてそれからまた、電話が鳴った。出てみると、
今日
バターロールを予約することはできますか?
という用件だった。
今日は バターロールを予約してくれるお客さまが多くて・・・
先程 焼き上がったものの数を数えたところ
たぶん あと3個残ると思います
じゃあ
3個 予約できますか?
はい
もう一度数を確認しないとはっきりわかりませんが
残った分を 確保しておきますね
お願いします
・・・!?
そんな電話が3件あって、今日はバターロールが店頭に並ぶ前に売り切れてしまった。
ちなみに最後の3個を予約してくださったお客さまは、これまでカンパーニュを食べたことがあったのだけれど、ブログを見ていたら最近のところにバターロールの話が書いてあって食べたくなったので、とのことだった。
さらに、その後にいらしたお客さまから、
バターロールは売り切れですか?
と聞かれた方が3人くらいいただろうか。
そのたびに、朝一番の電話で10個の予約が入って、そのあとに5個の予約が入り、さらに残った3個も予約の電話があって、今日は店頭に並ぶ前にバターロールが売り切れてしまいました。という説明をして、
申し訳ありません
と、お詫びをした。
夕方近くに来た常連さんで、やはりバターロールにはまってくれているお客さまに、
なんだか バターロール
人気急上昇中みたいです
と言うと、
だって バターロール
おいしいですもん
誰にすすめても 間違いない
女の人も男の人も
みんな おいしいって 言ってくれます
と、嬉しい言葉をいただいた。
で、一日が終わってみれば、天気が悪かったにもかかわらず、ぽつりぽつりとお客さまが来て、パンはほとんど売れていた。
食パンやカンパーニュが適当に残って、明後日のヒジノワ用のパンの一部になる予定にしておいたのに、結局のところ、明日、法事のあとに幾分かのパンを焼かないと間に合わない状況になっている。
なんということでしょう
ありがたや〜
それにしても 今日は
「バターロール」を だいぶ 連呼したな
そうだ、バターロールが売り切れちゃったので、明日伯母に渡すつもりのバターロールがなくなってしまったではないか。
仕方ない
食パンと
昨日の残りのバターロールで
勘弁してもらおう
それにしても 来週からのバターロールは
いくつくらい焼けばいいのか?
生地の仕込もあれなんだが、裏事情をこっそり話すと、バターロールの成形はちょっと手間がかかり、その時々の生地の具合によってもできの良しあしの幅ができやすいので、緊張するのだ。
本当に、バターロールがこの店の看板商品になる日がきたら・・・どうしよう!?