風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

EMSから見える東日本大震災の予後

 アメリカに住んでいる妹に、年に一度くらい荷物を送る。
 気に入っている日本のヘアクリームやハンドクリーム、あるいはお茶パック(お茶の葉っぱを入れるための袋状のフィルター)、あとは、昆布や海藻類の乾物、ついでにお菓子などを送っている。
 母が生きていた頃は、妹からのリクエストを元に母が楽しみながらのんびりと、アメリカ宛の荷物を作って郵便局に集荷を頼んでいたのだけれど、母亡き後は、私がその役目を担っている。

 アメリカに荷物を送るのに使っているのが、日本郵便のEMS(国際スピード郵便)というサービス。
 今は本土に住んでいる妹がそれ以前にハワイに住んでいた時にEMSで送ったところ、中1日置いて3日目に届いたことがあり、その速さにびっくりしたことがあるのだが(国内・沖縄に送るよりも早いんじゃない?(笑)ってなことで)、さすがにアメリカ本土まではそこまで早くは届かないが、たいてい1週間のうちには到着する。
 EMSで荷物を送る時には、ゆうパックよりも大きめな海外用の送り状を書くわけなのだが、以前は、内容物を簡単に列記するくらいで済んでいた。それが、数年前から、物品名のほかにも個数や重量など、細かく書く項目が年々煩雑になっていて、ちょっと“めんどくさいなぁ〜”と思うくらいの一仕事になってしまっている。個数のほかに重量や値段をメモしておかないと、送り状が書けないのだ。
 それで、妹のリクエストの品が一式揃い、今週前半の仕事休みの間にはアメリカにEMSを送れるようになったので、月曜日に送り状をもらいに郵便局に行ったついでに、あらためて書き方を教えてもらったところ、なんと!今や「関税報告書」やら「INVOCE」やら、いっぱしの輸出手続きをするくらいのことが必要になっていたのである。
 「送れないもの」も細かく指定されていて、たとえば化粧水などはアルコール濃度が何%以上のものは不可、とか、乾燥剤や防かび剤のたぐいも塩素が使われているものはダメとか、国際郵便のマニュアルにはこと細かく注意事項が記載されている(それも、国別に)。
 で、月曜日にもらってきた「関税報告書」と「INVOICE」に、物品名(英語)、正味重量、個数、単価、小計、合計などを書き込み、火曜日に荷物と共に郵便局に持っていき、海外郵便担当職員にチェックしてもらい(職員の方も、マニュアルと首っ引きで、引っかかることがないかをチェック!)、なんだかすごい手間と時間を要してようやく一個5Kg余りの個人宛ての荷物を発送することができた。今までは、高齢の母が、国内に宅急便を出すくらいの気軽さで出せていたものを、である。
 ちなみに、「関税報告書」は、送り状に書ききれればそれで済むのだが、物品の記載の方法が細かいため書ききれずに別添書類となってしまうので、送り状には「See attached document」と書いて添付書類を作る、という顛末。
 余りのめんどくささに、あぁ〜、もう送らなくてもいい!と切れそうになりつつも、そういうわけにもいかないので正味重量や個数、値段を一つ一つ紙に書いて電卓をたたき、「関税報告書」と「INVOICE」の数字が違っていないかの最終チェックもして・・・完全に会社の事務仕事である。
 郵便局の職員も、荷物を受け付ける広い窓口のところで何度も送り状と書類をチェックして、計算も間違っていないか自ら電卓をたたき、チェックができた「document(書類)」を箱に貼りつけるための透明な封筒に入れて、ようやく送り状と共に箱に貼って、と、本当にたいへんそうなので、こちらも怒るわけにいかない。(というより、なんというかもう、私の荷物にお手間を取らせてすみません…という申し訳ない気持ちになってくる)
 それで、

 だんだん 書き方が 細かくなっていきますね

と何気なくつぶやいたら、職員の方曰く、

 これは 税関を通すための書類です

とのこと。本当に、小さな輸出ということなんでしょうな。
 さらに、

 食品についてのことですが、
 郵便局ではこのままお引き受けできるのですが、
 見たところ アメリカでも買えるものばかりですので、
 場合によっては 引っかかることがあるかもしれません。
 送れなくなるものもあるかもしれませんが、
 そのことを ご承諾いただけますか?
 先ほども言ったように、
 ビーフエキスが入ったもの・・・コンソメ味のポテトチップなどは
 入れられませんし、
 乳製品や牛肉製品は送れません。
 福島の原発事故以来、うるさくなっていて・・・

と、教えてくれた。
 そうなのか・・・。
 送れないものを細かく言われるようになったのは、航空機の安全運航のためと、テロ防止のためかと思っていたが、そればかりではないようなのだ。
 商用の物品ならまだしも、個人的な送付物でさえ、ここまで細かく言われるとは。
 ふと、

 福島原発事故以来・・・
 ということで神経質になっているなら
 「dried sea weeds(乾物の海藻)」もチェックされそうだな

という思いが、頭の隅を横切った。

 東日本大震災、そして福島の原発事故から5年。
 東北や「フクシマ」を語る時、そして3月11日が来た時に、「復興」という言葉が消える日はまだ遠い未来にある・・・ということを、あらためて感じた一件だった。