風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

早春

 カレンダーに書きこんでいたにもかかわらず、昨日、父の命日だったことをすっかり忘れてしまい、夜になってはたと気がついた。
 思えば、先々週のお彼岸のこともうっかり忘れていたので、今日はお墓参りに行くことにして、とりあえず直売所に花を買いにいく。週末はパン屋の営業で外に出ることがないまま、火曜日になって久しぶりに外出したら、近くの桜並木がもうだいぶほころんで、遠目にも淡いピンク色に見えていた。考えてみれば、もう3月も終わりではないか!
 井頭公園に行ってみると、市街地よりもやや高台にあるからか、いつも桜の開花が遅めなのだけれど、それでも桜並木は花が咲きそうな気配になっていた。直売所では、行ったのが遅かったせいか切り花がほとんどなかったので、あらためて道の駅へ行ってみる。
 道の駅の近くには、花を出荷する農家が結構いるらしく、色とりどりのキンセンカや菜の花、スイセンフリージア、それからクリスマスローズの花束が残っていた。そのなかから3束を選んで買って帰り、お墓に持って行くものを2束と、家に飾る花束を1束作った。
 とはいえ、実は私は、花を生けるのがとても苦手なのだ。生花を飾ることもあまり好きではない。正確に言うと、生花を飾るのが嫌いなのではなく、人為的に切った花が枯れていくのを見るのが苦手で、かつ、枯れた花をゴミ箱に捨てることに心が痛むのだ。
 花を生けるのが苦手なのは、ただ単に、私にセンスがないだけのことなのだけれど、今日の花の中で特に、あっちの方を向いてしまっているフリージアをどうすればいいのかさっぱりわからず、

 あ〜 
 どうすればいいのか わからん!
 もう これでいいや

と妥協してしまったのだが、いざ、花瓶に挿したそれを両親の写真の脇に置いてみて、

 ・・・(笑)
 これ 絶対違うよな〜
 あら〜 なにこれ?
 って きっと(母に)言われているよな

と、思わず独り言をつぶやいてしまった。
 お墓用に作った2束は、何とかそれらしくなったような気がするので、それを持って、先祖のお墓のある寺まで歩いて行った。お彼岸のすぐあとだったので、お墓はきれいになっていたけれど、木の葉が落ちていたりしたのでそれを掃き清め、持って行った色とりどりの花を活けて線香を焚くと、心が落ち着いた。きっと、お参りに来る人を待っていたんだな・・・そんな気がした。
 帰り道、古い和菓子屋さんに寄って、桜餅と草餅を買った。
 家に戻って両親の写真の前に供え(我が家は散骨にしているので、仏壇も位牌もない)、お茶を淹れて自分も一服する。

 話が飛ぶのだけれど、『天空の城ラピュタ』で、生き残った一体の巨神兵が、仲間のお墓に花を摘んで供えに行く場面がある。道すがら、巨神兵の肩に、リスや小鳥が乗ってくる。あのシーンがとても好きで、あんなふうに静かに生きられたらいいな・・・と、ずっと思っていた。
 今の自分は、どこかあの巨神兵に似ているところがあるような気がする。
 生まれ育った家で、ある意味自分の生活が完結している。
 今までなんであんなにも心がざらついていたんだろう?というくらいに、心が凪いでいる。ま、時には時間がなさすぎてイラついていることもあるのだが、心の荒れた日が長く続くことはなくなった。
 桜が咲いて、セーターがいらなくなって、ブラウス1枚の暖かさになって・・・。
 雪国の春を体験したことで、それまで心が不安定になりそうで好きになれなかった春も、ちゃんと楽しめるようなった。