初めて来て下さったお客さまは、人の家の敷地の奥にこのまま入ってもいいものなのか?と、一瞬躊躇するような場所に建っているパン工房。その庭の一角に、原種のバラを植えている。
ドッグローズという一重のバラで、その実は「ローズヒップ」としてハーブティの原料になる種類のものだ。
そのドッグローズに、今年も花が咲き始めた。
濃いめのピンクの花がかわいらしく、来て下さったお客さまも心が惹かれるようで、
あれは バラですか?
とか、
写真を撮ってもいいですか?
と聞かれることが多い。
バラの花はなぜこんなにも人の心を引きつけるのだろうと思いつつ、ドッグローズの説明をしながら、
そう言えば うちのこのバラ
花は咲いても 実がなったところを見たことがない・・・
ということに気がついた。
秘かに自家製ローズヒップティを作ることを楽しみに植えたのに、どうなっているのだろう?
もしかすると、花が終わった頃から産みつけられた蝶の卵が孵り、小さな青虫に葉を食われて丸坊主になってしまう時期があるので、その時に花の跡も食べられてしまっているのかもしれない。
虫に喰われてほとんど枝だけになったバラというのもみすぼらしいので、青虫を退治した方がいいものかいつも悩むのだが、殺してしまったら蝶になれないんだよなぁ・・・と考えて、結局毎年そのまま、バラが丸坊主になる方を選んでしまっている。
5月も中旬になり、なんとなく梅雨の気配がしてきた。
そろそろ、梅仕事の季節も近づく。
甕に入れたままだった去年の梅干を保存瓶に移し替え、やはり去年、あんずの種と共に漬け込んだ杏仁梅酒も、漉して瓶に詰め替えた。
あとは、時のゆりかごにまかせて、熟成の時を待つ。