「花」という村野四郎さんの詩を、確か中学1年生の入学したての春いちばんの頃に、国語の授業で習った。
その中に、
花の中に町がある
黄金(きん)に輝く宮殿がある
人がいく道がある 牧場がある
みんな いいにおいの中で
愛のように ねむっている
という一節があり、その言葉の美しさに心惹かれた。
特に、「花の中に 黄金に輝く宮殿がある」というその一文がとても気に入っていて、当時庭に咲いていて大好きだった、青紫色の矢車草の花の冠のような形と一緒になって、大人になっても時々その詩を思い出すことがあった。
とはいえ、思い出すのはそのイメージだけで、詩を全部暗記していたわけではなく、どんな詩だったかなぁ・・・と思い出そうとするのだけれど、完璧に思い出すことができず、もう一度あの詩をちゃんと読んでみたいな、といつも気になるのだった。
それが、なんと!
三十数年ぶりに実家に戻ってきた9年前、物置の片付けをしていたら、その教科書が箱の中から見つかった。両親が、教科書をほとんど全部を箱に詰めて物置にしまった時期があったらしく、それがそっくりそのまま残っていたのだ。
ちなみに物置には教科書だけでなく、諸々の懐かしいものがたくさんしまわれていて、まるでタイムスリップしたような気持ちになったと同時に、大切に残そうとしてくれた今はなき両親への感謝の気持ちがあふれ出した。
教科書はほぼ全部廃棄してしまったけれど、中学1年生の最初の国語の教科書だけは物置から家の本棚に移して、今でも大切にとってある。
そんな話を何故今になって書いているかというと、この前から咲き始めたタンポポをマクロレンズで撮っていたら、
ああ
ここに
黄金に輝く宮殿がある!
と、またあの詩を思い出したから。
どんな詩だったか…今度は、ちゃんと、その教科書を取り出して読んでみたよ。
花 村野四郎
いちりんの花をとって
その中を ごらんなさい
じっと よく見てごらんなさい
花の中に町がある
黄金(きん)にかがやく宮殿がある
人がいく道がある 牧場がある
みんな いいにおいの中で
愛のように ねむっている
ああ なんという美しさ
なんという平和な世界
大自然がつくりだした
こんな小さいものの中にも
みちみちている清らかさ
この花の けだかさを
生まれたままの美しさを
いつまでも 心の中にもって
花のように
私たちも生きよう