風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

しあわせのパン 余談

 「しあわせのパン」の映画を観たのは、私自身、実家のある真岡に帰ってきて、パン屋を始めようと準備をしていた時だったので、運命の出会いのような映画だったかもしれない。
 実際にパン屋を始めてから、あっという間に9年が過ぎてしまったのだが、これまでにも、パン屋になってよかった・・・としみじみ思えるような言葉をお客さまから頂いたことが何度もある。
 そのたびに、しあわせのパン屋さんというのは、パンを買いに来てくれる人が幸せになるだけではなく、作っているパン屋自身もお客さまから幸せを頂くものなんだな・・・と実感してきた。


 私がパン屋になりたいと思った根幹には、勤め人として仕事をするのが嫌だったから、という思いがある(笑)
 臨時職員やハケンなどの立場でフルタイムで仕事をしても、田舎では手取りで10万円そこそこにしかならず、職場での理不尽と思われるようなあれこれや、要領よく(というか、集中力全開で)その日の仕事を終わらせても定時になるまでは帰れないことにいらいらすることが増えて、サラリーマンは自分には合っていない、こんなことなら自分で何かをやった方がいい!と気持ちを切り替えたのが発端になっている。
 勤め人ではない何か=「パン屋」 に行き着くまでにも紆余曲折が多々あったし、パン屋になってからも紆余曲折しているものがないわけではないが、少なくても人生の全時間を自分の自由に使えるようになったことに大いに満足している。(人に命令されることなく、今日の仕事を自分で決められる、という自由ですね。もちろんその分、何があっても自分の責任であって、人のせいにはしないという覚悟も必要になってくる)
 そうして、それまでは「自分は幸せだ」と思うことができなかった(思えることがあっても、この幸せは長くは続かないだろうなと、心のどこかでわかっていた)ところが反転して、今では「こんな生き方ができるようになって、自分は幸せだなぁ~」と心穏やかに過ごせている。




 ちなみに映画では二人のなりそめが描かれておらず、大泉洋さんと原田知世さんが演じる"夫婦”の微妙な距離感が気になるのだが、小説化された文庫本を読むと、二人の出会いの場面も書かれてあって、そういうことだったのか・・・と、もう一度映画を観たくなる。
 文庫本にはマーニの絵本もついていて、読んでいない方には是非手に取っていただきたいおすすめです!