おやつの日の開店時刻は午後1時なのだが、今日は作業中の12時頃、お店にいらしてくださった方がいた。
数週間前に来てくれた、Hさん。
Hさんは、76歳とかおっしゃっていたけれど、とてもお若くて活動的で、近所の方たちの相談員のようなことをしていらっしゃる。母が存命中に一人暮らしをしていた時にも時々様子を見に来てくれたことがあり、だいぶお世話になったらしい。
そのHさん、ドアを開けるなり、今日は1時開店などということは目にも止まっていないらしく、
これから 同窓会・・・
集まりがあって
90歳の方にお会いするのよ〜
一人暮らしをしているんだけど
その方に持っていくもの
何がいいかしら・・・
と棚を見渡すも、まだ今日焼きあがったパンはなく、昨日の夕方焼き上げておいた桜パウンドと、昨日の売れ残りのいくつかの甘めのパンが棚に載っているだけだったのに、そんなことに疑問を持ったふうでもなく、
ああ このケーキ
5つ いただこうかしら
おいくらですか?
と値段を聞きつつお財布を出すと、どうも細かいお札がなかったらしく、
大きいお金だと
おつり たいへんでしょ?
1000円しかないから
どうしましょう・・・
といいながら小銭まで数え、
ああ 2000円あったわ!
じゃあ 2000円で
何か 見繕っていただけるかしら
とおっしゃるので、パウンドケーキをふた切れと、豆パン、ジャムパン、シナモンロールをいれて計算したら、1000円とちょっとになった。
ああ
じゃあ それでいいわね
一人暮らしだから
たくさんは いらないでしょう
いや、もう、5つでは食べきれないほどなんじゃないかと思うのですが・・・(笑)
それらを袋に入れ、手渡すと、
ありがとう
こんなパン屋さんができたのよって
言っておくわね
と素敵な言葉を残してドアを開け、
行ってきます
と、さっそうと外に出た。
行ってらっしゃい
お気をつけて
見送ると、Hさんはにこっとしてドアを閉め、同窓会?とやらに向かっていった。
76歳にして未だに活躍中のHさんと、一人暮らしをしているという90歳の方と。
20年後、40年後・・・私にはまだ知りえない、未知の世界と境地がそこにはありそうな・・・。