風の通りすぎる場所@あおいベーカリー

自家製酵母のパン工房「風の通りすぎる場所@あおいベーカリー」に関するお知らせと、何気ない日常を綴っています。

生物兵器処理班

 今日だから話せるんですが・・・
 工房がある庭に植えてある椿の木に、毛虫が発生して、葉っぱをすごい勢いで食べ尽くされまして・・・
 そういえば去年の秋も、このツバキの木に毛虫が大発生していたと思い出し、近づいて観察したところ、



 うわぁぁぁぁああぁ〜!



ぞわぞわ(ざわざわ+ぞくぞく)っとする光景が・・・。毛虫が葉裏に横一列にきれいに並んで、葉を貪り食っていているではありませんか!毛が長く、いかにも毒がありそうな様子。



 ど、どうしよう・・・



だからといって、あまり殺虫剤は使いたくない。
 で、毛虫を発見したそのあとに、どうしたものかと悩み考えたあげく、殺虫剤の代わりに火で焼くというのはどうか?と思い至りまして、チャッカマンを持ち出し、火であぶるという暴挙に出ました。それも、半袖、素手で。
 何とかしなければ!という勇気を奮い立たせての行動とは言え、我ながらすごいことしているなぁと客観視しつつも、お客さまに被害があってはいけないという一念で毛虫にチャッカマンを当て、火あぶりにしたのだが、これが毛虫の毛は燃えてもなかなか手ごわくすぐには成仏しない。そのうち葉裏でのたうちまわって地面に落ちるものがいたり、糸を吐いてたら〜んと場所を変えようという強者がいたり、毛虫に触らないように気をつけながらも、とにかく目についた毛虫に火を当て、とりあえず毛を焼くくらいまではやったつもり。しかし、死んだかどうかは不明。
 ほぼ、やり尽くしたのでは?思われるところで私のぞわぞわがピークに達し、



 とりあえず 今日はここまで・・・



と、家の中に戻り、そう言えばあの毛虫はなんの幼虫なんだろう?と「椿 毛虫」で調べてみた。で、その結果を見て毛虫を見た以上に驚いた!
 その毛虫は、チャドクガの幼虫。しかも、チャドクガは成虫や幼虫だけではなく、卵(卵塊)にも成虫の毒毛針がついていて危険とある。よくよく読めば、チャドクガがいる木の近くに行っただけで毒毛針が飛んできて被害にあう人もいる、とも書いてあるではないですか! 
 おいおい、わたしゃ半袖かつ素手で、チャドクガ毛虫にチャッカマン当ててたぞ!そういえば母が、すごく痛い毛虫に刺されたことがあると話していたことがあったけれど、もしかしてこれ?しかし、びりっとくるような痛みも、何かかゆみとかも全くない。どうも私は無事なのだ。(悪運強し!)
 さらに、チャドクガの記事を読んでみると、毒毛針はタンパク質なので、火で焼くと変質して毒がなくなると書いてある。私の暴挙は、まんざら無謀ではなかったらしい。いや、半袖で素手で、というのは無謀だったが、とにかくかなりの毛虫の毛を焼いたものと思われるので、危険がかなり減ったものと思われる。
 とはいえ、毛虫である。あれをどうやって処理すればいいのか・・・やっぱり、殺虫剤を使うしかないか・・・と考えつつも、翌日からは営業日となり、すぐに対処できそうにもない。でも、何かあった時のために殺虫剤は買っておいたほうがいいだろう、と、ようやく毛虫用の殺虫剤を買ってきて椿の木に恐る恐る近づくと、なんと、糞が落ちてくる音が聞こえる。もう、何もかもがぞわぞわなチャドクガだ。さらに、恐々と幼虫を確認すると、け、毛虫が少なくなっている・・・チャッカマンで死んだのか?それとも成長して散り散りになってしまったのか?だいたい、椿の木は葉っぱを全部食べ尽くされて、丸裸…
 それでも、毛を燃されてイモムシのようになったチャドクガの幼虫と思われる虫が葉を食べているのが何匹も確認できた。それに向かって、とにかく殺虫剤を吹きかけた。
 で、このあとどうすればいいんでしょう?
 まさかのこぎりで枝を切ったら、その振動で毛虫が落ちてくるだろう。しぶとくも生きている奴もいるかもしれない。
 と思ったら、それ以上のことをする気にはなれず、とりあえずその日は殺虫剤を毛虫にかけた、ところで終わった。



 そんなこんなの日から、4日ほど経っただろうか。
 営業日を前に、今日こそは最終処理をしなければ!と、危険物処理班みたいな気合いを入れて(今日はさすがに長袖、手袋、長靴着用です!)、椿の木に向かう。そ〜っと、毛虫を探すと・・・あれ?いない??
 死んで落ちたのか、わからないが、木についているようには見えなかった。しかし、油断大敵。
 大きな剪定ばさみで細かい枝を切り落とし、太い枝はのこぎりで、落ちた枝は炭バサミではさんで、大きなポリ袋の中に。
 ちなみに、チャドクガにつかれた椿は、3本。大きな木ではなかったので、私の手で無事に任務を終えることが出来た。
 


 それにしても、チャドクガの毒は、成虫から幼虫から卵塊まで毒があるとか、毒毛針は風に飛んで来ることもあるとか、猫や犬に毒毛針がついてそれで人が被害に合うこともあるとか、刺されると半年くらい治まらないとか、一度刺されると抗体が出来て、2度目からはアナフィラキシーショックになる可能性も出てくるとか、何しろ“チャドクガノドクゲバリ”という、半数が濁音のその語感からしてもなんだか薄気味悪い。
 そんな最強な毒をもった毛虫に刺されることなく、処理できたのも奇跡に近い。だって、その木の下で草むしりをしていたこともあるのだから。



 ちなみにチャドクガは、ツバキ科のツバキや茶、サザンカ、ナツツバキなどの葉を食害するらしい。だから「チャドクガ」なのか・・・。それも、年に2回、初夏と秋に発生するというからタチが悪い。
 茶畑のお茶の木には一年に何回も農薬を播く、と聞いたことがあったのだが、その理由を、ものすごいリアリティをもって知った一件であった。